顧客体験の本質について議論する

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「次のステップは、カスタマージャーニーマップをさらに深掘りし、顧客体験そのものを見直すことです。」
村山マーケティング部長の一言で、会議は新たな局面を迎えました。ホワイトボードには、先日描いたペルソナ3種類の概要がまだ記されています。田中さんと川上さんは、村山部長の提案に耳を傾けつつ、それぞれの視点で次の議論に備えていました。
「顧客体験というと、具体的にはどんな要素に着目すべきでしょうか?」と田中さん。
村山部長は、ペンを手にホワイトボードに「感情」「感覚」「思考」「行動」と4つのキーワードを書き込みます。
「顧客体験を構成する要素は大きく分けてこの4つです。感情的な満足感や驚き、触覚や視覚といった五感への刺激、顧客にとっての理解や納得感、そして最終的に行動を促す流れをどう作るか。この4つの視点で顧客体験をデザインする必要があります。」
川上さんが頷きながら応じます。「感情と行動の部分が営業の現場では特に重要だと感じます。例えば、ペルソナAに対しては、わかりやすいビジュアル資料で感覚的な理解を深めつつ、ポジティブな感情を与えることが鍵だと思います。」
「その通りです。」村山部長が補足します。「特に製造業では、技術的な部分に偏りがちですが、感情や感覚的なアプローチも重要です。ペルソナBのように競合製品を慎重に比較するタイプには、デモ体験で触覚を刺激する手法も有効でしょう。」
田中さんが資料を手に取りながら話します。「ペルソナCのような意思決定者の場合は、論理的な納得感とともに、信頼感を深めるような体験が重要ですね。例えば、経営層向けの個別相談や課題解決の投資対効果のシミュレーションが有効ではないでしょうか。」
村山部長は3人の意見をまとめるように言います。「その通りです。これらの要素をどうジャーニーマップに反映させ、展示会を含む全体の流れに組み込むかを考える必要があります。単なるイベントとしてではなく、顧客との長期的な関係構築の一部として捉えるべきです。」
こうして、3人の議論は「顧客体験の本質」に焦点を当て、カスタマージャーニーを一層進化させるための次のステップへと進んでいきました。
現代において顧客体験が重要視される背景には、競争が激化する市場環境や、顧客がより多くの選択肢を持つ状況があります。単に製品やサービスの品質を競うだけでなく、顧客との接点でいかに感動や満足感を提供できるかが、企業の差別化要因となるのです。また、ポジティブな顧客体験は、ブランドロイヤルティや口コミによる新規顧客獲得にも繋がり、企業の長期的な成長を支える重要な要素とされています。
展示会とカスタマージャーニーの連動

展示会を成功させる鍵は、展示会そのものだけでなく、その前後のカスタマージャーニー全体を一貫して設計することにあります。顧客の感情を動かし、感覚を刺激し、思考を深め、行動を促す体験を連続的に提供することが重要です。
感情を動かす
展示会の前段階では、顧客の心を動かす施策が必要です。「なぜこの展示会に行くべきなのか?」という問いに明確に答えるメッセージを伝えます。
例えば、営業担当者が直接招待状を持参し説明する、展示会専用の特設ページを設けてメリットを強調するなどが有効です。この時、単なる価格訴求ではなく、顧客が共感できる理想の未来像を描くことが大切です。魅力的な動画や、実際の課題を解決するシナリオを提示することで、顧客に期待感や興味を持たせることが可能です。
感覚を刺激する
展示会では、顧客の五感を刺激する工夫が重要です。
特に製造業では、製品の質感や動作、使用感などを実際に体験できるインタラクティブなコンテンツが効果的です。触れることができるサンプルやアプリケーションのデモ、また視覚的に訴求力のあるディスプレイや動画を活用することで、顧客に製品の魅力を直感的に伝えることができます。また、音や触感を取り入れた展示が、顧客に記憶に残る体験を提供します。
思考を深める
展示会後には、顧客の冷静な意思決定を支援するための、体系的で分かりやすい情報提供が重要です。
特に価格に関する透明性が顧客の信頼を得る鍵となります。価格モデルや導入コスト、長期的な運用コストなどを明確に説明し、コストパフォーマンスの観点で納得感を提供する必要があります。特にB2Bの分野では、複数の意思決定者が関与する複雑な購買プロセスが一般的です。価格設定が競合とどう異なるのか、またそれが具体的なビジネス価値にどう結びつくのかを示すことが、成功のカギとなります。
このため、展示会後のフォローアップ施策として、製品の詳細仕様や適用事例、他社との比較データを含む資料を提供することが効果的です。さらに、顧客の特定の課題を解決するためのカスタマイズ提案や、実際のビジネス環境を想定したシミュレーションを用いることで、より具体的なイメージを提供します。経営層向けには、投資対効果を明確にしたプレゼンテーションや特別セミナーを通じて、戦略的な納得感を引き出すことも有効です。
行動を促す
最後に、顧客が次のステップを踏むような具体的な行動設計が重要です。展示会後にウェビナーや個別相談会を実施し、さらなる情報を提供する場を設けます。また、実機を用いたデモンストレーションや、顧客の環境でのテスト実施を提案することで、より具体的な導入プロセスに進んでもらうことができます。これらの施策は、顧客との関係性を深化させ、購入意欲を高めるための重要な要素となります。
展示会は単なるイベントではなく、カスタマージャーニー全体の一部として位置づけられるべきです。その前後の体験を丁寧に設計し、顧客に一貫した価値を提供することで、持続的な成果を生み出すことができます。
成長する企業が提供すべき『顧客体験』の進化

現代のビジネス環境において、顧客本位の視点で顧客体験を設計することが、成長する企業に求められる基本姿勢です。昭和モデルに見られる売り手本位のアプローチや押し売り的な営業スタイルは、情報が溢れる現代の顧客には通用しません。
購買担当者や開発担当者は、営業担当者と接触する前や展示会を訪れる前に、すでにWebで情報を収集し、自社の課題に対する潜在的な解決策を検討しています。このような状況を踏まえ、顧客との信頼関係を築き、課題解決型のアプローチを取ることが不可欠です。
顧客との関係を深化させるポイント
顧客本位のアプローチを実現するためには、ただ製品を提供するだけではなく、顧客の長期的なパートナーとして信頼を築く必要があります。これを実現するには、以下の要素が重要です:
- タイミングを見極めた情報提供: 顧客がどのフェーズにいるかを理解し、それに応じた適切な情報を提供します。初期段階では問題提起や市場動向の共有、中期では具体的なソリューションの提示、最終段階では導入プロセスや費用対効果の明示が求められます。
- 顧客の意思決定を支援する情報: 具体的な事例やROI(投資対効果)のデータ、競合製品との比較情報など、顧客が合理的に判断できる材料を用意します。これにより、顧客が自信を持って意思決定できる環境を整えます。
- Win-Winのパートナーシップの構築: 自社の利益だけでなく、顧客の成功を第一に考えた提案を行います。これにより、顧客に「一緒に成長していけるパートナー」という印象を与えることができます。
製造業に特化した顧客体験の設計
製造業においては、B2B特有の複雑な購買プロセスを理解することが不可欠です。意思決定に関与する多様な担当者(購買、開発、経営層など)にそれぞれ異なる価値を提供し、全体の調和を図る必要があります。以下の施策が効果的です:
- 技術資料やデモ体験を活用: 技術的な詳細情報を分かりやすく提供することで、顧客の業務効率向上に直接結びつけます。例えば、製品のデモや試験導入の機会を提供することで、顧客が自社環境での使用感を体験できます。
- 課題解決型の提案: 顧客の具体的な課題を深掘りし、その解決策を提案します。例えば、物価高や生産性向上のニーズに応えるカスタマイズ可能なソリューションを提案することで、顧客に実用的なメリットを示します。
顧客本位のアプローチに基づき、顧客の課題解決を第一に考える姿勢は、競争の激しい市場において企業の差別化を実現します。この姿勢が信頼を生み、長期的な関係性を築く鍵となるのです。
WAKOH&CO.のサポートで描く顧客体験の未来

WAKOH&CO.が目指すのは、顧客に「売り込む」のではなく、「惹きつける」こと。そして、顧客が自ら「探したい」と思う仕掛けや方法を提供することです。企業ごとに異なる文化や価値観に寄り添い、独自のカスタマージャーニーをデザインすることで、他社にはない顧客体験を共に創り上げます。
WAKOH&CO.のアプローチ
WAKOH&CO.は、単なる営業活動の効率化を超えた、本質的な顧客体験の設計をサポートします。以下の3つの特徴を軸に、貴社のビジネス成長を支援します:
- カスタマージャーニーマップの活用
- 顧客がどのようなプロセスで自社製品やサービスに出会い、信頼し、購入に至るのかを「線」でつなぎます。
- 展示会やWebサイト、営業活動といった顧客接点をシームレスに連携させ、一貫性のある体験を設計します。
- 顧客文化への深い理解
- 貴社が持つ独自の企業文化や顧客層に合わせた、完全カスタマイズ型のソリューションを提案します。
- 誰にでも通用する方法ではなく、貴社に最適化された体験設計を実現します。
- 「売り込まずに売る」仕組み作り
- 魅力的な体験や価値ある情報を通じて、顧客が自然に「もっと知りたい」「相談したい」と思う状況を作り出します。
- その結果、顧客が自らコンタクトしてくるような「探してもらう」関係性を築きます。
行動喚起:体験型セミナーで第一歩を
WAKOH&CO.では、貴社の課題や目標に応じた無料相談会や体験型セミナーを実施しています。これらのセミナーでは、貴社の顧客体験をどのように改善し、ビジネス成長へつなげるかを具体的にアドバイスします。セミナー参加者からは、「実際に使える具体的な施策が得られた」との高評価をいただいております。
顧客体験を進化させ、貴社のビジネスを新たなステージへと導くために、ぜひWAKOH&CO.にご相談ください。お問い合わせをお待ちしております。
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