この15年間であらゆるマーケットが確実に変化していることを誰もが実感していると思います。
変化し続けているマーケットにおいて企業が競争力を維持し、選ばれ続ける存在になるには進化する顧客ニーズに適用し、一歩先んじるイノベーション・スピリットが必要。
それが顧客満足度の向上、結果として企業の売上・利益の増加、競合他社との差別化、強いブランドイメージを確立することにも貢献する。
パーソナライズ、マスカスタマイゼーション、eコマース、多品種少量生産等の対応で急速に変化が求められる製造現場の根幹、ファクトリー・オートメーション・システム(FAシステム)における企業の取り組みを例に挙げたいと思います。
このオートメーションシステム業界における世界の中心プレイヤーは、日本・欧州・北米企業。
この3地域の企業だけでトップ25位を独占しています。
しかしながら、昨今変革が求められるこの業界において、イノベーションの生まれている中心地は、以下に挙げる新たな課題に対する解決策やアプローチを生み出した欧州と北米企業群であり、日本企業は後追いとなっているのが現実です。
- DX
- Industrial IoT
- Indusrie 4.0
- Adaptive Manufacturing
- Intelligent Automation
- Smart Manufacturing
これらキーワードは誰でも聞いたことがあると思います。言語が英語と独語なのでルーツは全て北米企業と欧州企業であり、日本企業発というコンセプトは一つもありません。
ファクトリー・オートメーション業界という、比較的地味で影の黒子業界で発生したこの違いや差はどの業界にも起こる可能性があります。
何故、このような「差」がこの業界で生まれてしまったのでしょうか?
それは、問題を放置せず、新しい技術やこれまでの技術の組み合わせによってイノベーションを起こし、現状の不満を解決し、パラダイムシフトを起こしてやるという強い企業文化に結び付いていると思います。
私が最前線で仕事をし、見てきたこの経験が、様々な企業のイノベーション前進にお役になれば幸いです!
強烈なリーダーシップ
企業内にイノベーションの文化を醸成するためには、先見性のある強烈かつ強力なリーダーシップが不可欠です。
まさに今、顧客が抱えている問題、業界全体の変化に敏感になり、これから発生してくるであろう問題や顧客が達成したいターゲットを傾聴し、業界のあるべき姿やビジョンをもったリーダー。
与えられた課題を一つひとつ片付け、サラリーマン思考で階段を一歩一歩上がり「先代社長の意思を引き継いで〜」とは全く違う強烈なリーダーシップ。
急速に変化する市場において肌感覚で感じ、データで裏付けた事実をベースに明確な方向性を示し、チームを鼓舞し続け、リスクテイクを奨励する環境を作らなければなりません。
そして、イノベーションを起こす、業界に風穴を空ける、業界初をやってのけてやろうじゃないか。という強烈な意思をリーダーが従業員に見せなければなりません。
少なくとも私が見た欧州企業のリーダーはそのパッション、火傷するほどの情熱を持っていた。
そして、上手なのが、そのパッションとパッションを掛け合わせるパートナー企業とアライナンスを組むこと。
一社で出来ることには限界がありパワー不足で業界に風穴を開けられない。
だから、彼らはアライアンス、徒党を組む。
有名なところでは、規格ではISO, UL, CEマークなどがあり、最近ではGAIA-Xという欧州域内に存在する通信インフラや産業・個人データの収集・活用、デジタルプラットフォームを統合するようなデータインフラの構築を目指したプロジェクトも発足している。
これもデータという21世紀の富の源泉を米国Tech企業に抑えられた欧州連合の対抗だともいわれている。
後塵を拝していようが、徒党を組んで必ず巻き返す、良いようにさせないという強烈なリーダーシップが伝わってきます。
日本企業も東アジア諸国、ASEAN諸国、インド、オーストラリアのアジアおよびオセアニア地域でパートナシップや徒党を組むことが出来ると思います。そのリーダーシップを取れるだけのポテンシャルはあると思います。
どんな組織文化を創りたいか結果からアプローチする
組織が創造性に溢れ、実験し、リスクテイクを支援し、イノベーションを奨励する文化を作り出したければ、社員が自発的に率先して挑戦する環境を作り出し、挑戦させ失敗も受け入れる覚悟を持たねばらないない。
残念ながら、多くの企業は失敗を許容する文化が醸成されていない。
昭和ビジネスモデルにおいては、答えや問題解決の方向性がある程度見え予測できた為に、突拍子もない新しいアイデアよりも先人が作ったレールを継承し、間違えずに延伸していくことが重要視されていた。
しかし、時代は令和になりました。
変化の速い時代において、先人達が作ったレールは既存ビジネスを回していくため、当座の稼ぎを作り出すためにもなくてはならないが、次なる成長カーブを生み出す新事業創出が求められる。
そのためには、企業文化もこれまでの昭和企業文化から令和の企業文化へ進化させなくてはならない。多様性を受け入れ、変わり者をバカにせず、男女平等であるのは当たり前、マイノリティでも平等であるのは当たり前、能力があれば外国人でもリーダー、上司になって当然、年長者が常に偉くて意思決定していくのではなく、機能によって意思決定者が異なりフラットな組織文化。
若者、よそ者、馬鹿者を排除するような組織になっていないでしょうか。
多様で包括的な文化、異なる経歴、経験、考え方を持つ多様な人たちが集まっているでしょうか。
同じ年代、同性、似たような経歴、似たような学歴、考え方、同じ釜の飯を喰った仲間達が多い組織になっていないでしょうか?
欧州は、その地理的側面からも隣国が陸続きであり、欧州圏内を自由に渡り歩き、国籍という枠を飛び越えて他国で就労することが出来る。特に優秀なエンジニアは引くて数多であるため、経済的合理性が合致すれば簡単に移籍が出来る環境にあります。
そして彼ら彼女らは苦手でも英語をしっかり話して自己主張する。自己主張しやすい環境を会社が整えている。
どんな企業文化を本当に望んでいますか?昭和の同質性ノスタルジーはいったん捨て時代に適用しましょう。
それが社内に無ければコラボレーション
全て自前主義が良かった時代もありました。配送、保管倉庫、梱包、検査、アセンブリ、内製基板コントローラー、各種センサー、リアルタイムOS、アプリケーションプログラム等。
それは、画一的な製品を大量に生産し続ければ良い時代にフィットする最適なアプローチ。
しかし、インターネットが生まれ、ポケットに入るサイズで電話もできるパソコンが登場したことにより、消費者の行動様式やニーズが大きく変化してしまいました。B2Cが変われば、B2B領域においても変化が求められる。まさに今はどこに行っても、どこもかしこもイノベーションが求められている。
多くの欧州企業の場合も、解決しなければならない問題があれば、先ずは内部公募も含めて社内を探し、部門を探すが、求める機能や能力を持った人的リソースが見つからなければ外部企業とパートナーシップを結ぶことが頻繁に起こります。
もちろん、外部企業とのパートナーシップは契約に絡むので骨の折れる作業や交渉が待っている。
しかし、市場に潜む重大な問題を解決し、ビジョンが実現すれば大きな大きな果実を得ることができるチャンス。
外部企業との資本提携や技術提携、パートナーシップ契約は恥ずかしいことではない。
自前主義にこだわって、好機を逃す方がリーダーとして恥ずかしい、と考えることが出来ます。
継続的な学習、リスキリングを奨励しているか
諸行無常。時代は常に変わり続け、変わり続けることが唯一の変わらないこと。
その昔、工場で稼働する機械はまさに機械仕掛けであった。それが電気駆動になり、サーボモータやリニア搬送技術が登場し、浮上型リニア搬送技術という新しいイノベーションも登場してきている。
エンジニアとして求められるスキルも、機械設計から電気回路設計、モーションコントロールプログラム、そして、ウェブ系言語としてHTML5、CSS、Java Script、ビッグデータ解析、AI(人工知能)/ML(機械学習)と移り変わり続ける。
チームメンバーに新しいスキルを身につけることを奨励することは、革新的な組織を作ることに繋がります。
そもそも人間には学習意欲というものが本質的備わっているものなので、興味があって事業と大きく逸れていないコンテンツがあるのであれば、積極的に会社も時間的、費用的なサポートを可能な限りすれば良いことだと思います。
昭和時代に作った読めば済むような従業員教育ハンドブックなどを廃止して、然るべきところに時間を投下すれば良いことだと思います。
顧客重視、カスタマーサクセスを本当に重視しているか
顧客の目の前のニーズや痛み、達成したいことを実現するために伴走する姿勢は企業として当然のこと。
加えて5年後に直面するであろうニーズや痛み、達成されたいこと想像し、考え、理解し、その洞察をイノベーションの推進に役立てる。
まだ可視化されていない問題に対して仕込みを入れておくことが開発の醍醐味。
そして、それがカスタマーサクセスにつながるということを意識して欧州、北米企業は次なるソリューションを練っている。
イノベーションは一過性のものではなく、継続的なプロセスであることは留意しなければならない。だからこそ、彼らはイノベーションの文化を醸成するために時間と労力を惜しまず投入している。
我々が進むべきこと、方向性は明確だと思います。昭和ビジネス成功体験の呪縛から自らを解き放ち先人の功績を尊重すれど崇拝せず、時代にフィットした事業形態へ変容していく。勇気を持って先ずはやってみる。やってから軌道修正する。
社内から、若者から、よそ者から湧き上がって来る新しいアイデアや考え方に蓋をしない。面白そうだからまずは試験的にやってみようというチャレンジング精神。パラダイムシフトを起こしてやろうじゃないかという気概があっても良いじゃないですか!?
そのアプローチの方がきっと令和の時代も面白くなると思っています。
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