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売ることは企業の宿命:顧客が『買いたい』と思う瞬間を創る力

前回までのあらすじはこちらから

展示会の方向性がようやく固まり、村山マーケティング部長と営業の川上さんは、いつもより少し遅い時間にランチを楽しんでいた。すると、偶然にも信夫営業課長が同じ店に現れた。

「おう、村山さん、川上さん、偶然だね。お互いに遅いお昼ですね!」と、信夫課長が笑顔で彼らのテーブルに近づいてきた。

「展示会準備、どうですか?」と、信夫課長が尋ねる。

「ええ、おかげさまで。大枠の方向性は固まりました。集客、お願いしますよ!」と、村山部長が答える。

「はい、それは営業部隊の腕の見せどころですね。俺たちも頑張ります。」と、信夫課長は自信満々に笑った。

川上さんは、信夫課長の「頑張る」という言葉に少し引っかかるものを感じた。この言葉の裏には、常にプレッシャーと隣り合わせの営業現場の苦悩が隠されているように思えたからだ。

そう、営業、セールス、セールスエンジニア、事業責任者、新規事業開発は常に数字と向き合う必要があります。「売らなければならない」「販売しなければならない」という姿勢で業を営むと、「数字」がプレッシャーとなってしまいます。

残念ながら、そのプレッシャーをそのまま部下へ流す、押し付けるという上意下達だけのお仕事人もいることは事実です。しかし、それを風土として許してしまうと、責任を押し付け合うゲームになってしまいます。

優れた結果を残す組織は、目的と目標をチームで達成しようとします。 顧客に価値を提供することは「営業」だけでは足りないのです。社長、取締役、事業部長、部長、課長、課員、皆でゴールを達成するのです。

目次

売ることは宿命:企業が存在する限り避けられない使命

Appleでさえも毎年営業している!

企業は、その性質上、営利団体です。つまり、利益を追求し、持続的な成長を遂げるためには、 「売る」 という行為を避けて通ることはできません。世界を席巻するAppleでさえも、毎年新しいiPhoneを市場に投入し、顧客を獲得し続けています。しかし、彼らは決して「買ってください」と露骨に訴求することはありません。

Appleが提供するのは、洗練されたハードウェアとソフトウェアの融合によって生まれた、快適かつ便利な、まるで頭脳の延長線上にあるかのような優れた価値体験です。iPhoneというたった一台のデバイスを持つだけで、私たちは電話、パソコン、音楽プレーヤー、カメラ、計算機、手帳、書籍、新聞、さらには銀行カードやAIまでも、いつでもどこでも必要な時に利用できるようになります。そして、瞬時に世界とつながる接続性も手に入れることができるのです。

このような革新的な製品を生み出しながらも、Appleは毎年、消費者へ直接的な売り込みをすることなく、新型iPhoneを世に送り出しています。これは、企業にとって「売る」という行為がいかに不可欠でありながらも、同時に、それをどのように顧客に受け入れてもらうかが重要であるかを示す好例です。

つまり、企業は「売ること」を宿命として受け入れながらも、それを「押し売り」するのではなく、顧客自身が「買いたい」と感じるような価値を提供し、信頼関係を築くことが求められるのです。そのためには、社長、取締役を含むマーケティング、営業、開発など、あらゆる部門が一体となり、顧客のニーズを深く理解し、それに応える製品やサービスを生み出す努力を続けなければなりません。

企業の真の価値は、単に商品やサービスを販売することではなく、顧客の生活を豊かにし、社会に貢献することにあります。その価値を顧客に認められ、選ばれる存在となることこそが、企業の持続的な成長と成功の鍵を握っているのです。

売上の源泉:既存顧客からも「買いたい」と言われ続けられるために必要なこと

買いたいといわせるために

売上は、無理に売り込むことから生まれるものではありません。顧客が心から「買いたい」と感じる瞬間にこそ、売上は生まれます。この原則は、B2C(企業対消費者)でもB2B(企業対企業)でも変わりません。

しかし、新規顧客を獲得することは容易ではありません。既存顧客を維持するコストよりも、新規顧客を獲得するためのコストは5倍もかかるという「1:5の法則」が存在するように、新規顧客に「買いたい」と感じてもらうことは非常に重要です。

一方で、既存顧客を大切にすることも忘れてはなりません。Bain & Company社の名誉ディレクター、ライクヘルド氏の言葉にもあるように、既存の顧客にこそ「買いたい」と言われ続けなければ、企業の持続的な成長は望めません。

特に、日本の多くの中規模企業、特にB2B法人向けに事業を展開している歴史ある企業では、この点が不足している可能性があります。市場は常に変化しています。インターネットの普及により、誰もがいつでもどこでも情報にアクセスし、商品やサービスを比較検討できるようになりました。従来の御用聞き営業だけでは、顧客のニーズに応えられなくなっているのです。

企業は、変化する市場に対応し、自社が提供できる価値を問い直す必要があります。顧客の困りごとや悩み事を解決するために、新たな商材、新たな販売形態、新たなサービスが必要なのか?その答えを見つけるためには、営業部だけでなく、マーケティング部、技術部、開発部、そして経営陣までもが一体となり、市場の変化に対応していく必要があります。

40年以上のお付き合いがある既存顧客であっても、時代に取り残された価値観やサービスを提供していては、「買いたい」という言葉を聞くことはできません。常に顧客の声に耳を傾け、彼らのニーズを先取りし、新たな価値を提供し続ける努力こそが、企業の成長と発展を支えるのです。

企業の真の価値は、顧客に「買いたい」と思ってもらえる製品やサービスを提供し続けることによってのみ、証明されるのです。

「売ってこい」の語弊:現場を疲弊させる原因とは

売ってこいは最悪のワード

「売ってこい」― この言葉は、多くの営業担当者にとって、精神論で無理強いされているように感じられ、モチベーションを低下させる原因となります。経営陣から発せられるこの言葉には、どこか他人事のような響きがあり、現場の状況を理解していない印象を与えてしまうのです。

営業担当者は、「言葉」を重要なツールとして扱う職業です。だからこそ、彼ら・彼女らは、他人事のように聞こえる言葉に敏感に反応します。「なぜ売れないんだ」「売れるはずだ」「売ってこい」といった、軽々しく投げかけられた言葉は、彼らの心を深く傷つけ、自信を失わせる可能性があります。

前述したように、企業は売上なしに存続できません。同様に、企業に属する誰もが「売る」という行為から逃れることはできません。しかし、だからこそ、「売ってこい」という言葉で一方的に責任を押し付けるのではなく、共に目標達成を目指す姿勢を示すことが重要です。

「売る」と「買いたい」の間には、大きな隔たりがあります。それぞれの企業には、独自のDNA、強み、弱みがあり、置かれている環境や時代背景、そして組織を構成するメンバーも異なります。だからこそ、それぞれの制約条件の中で、チーム全体で知恵を出し合い、協力して目標を達成することが重要なのです。

「売ってこい」という言葉は、短期的な成果を求めるあまり、現場の状況を軽視し、結果的にチーム全体の士気を低下させる可能性があります。真に成果を上げるためには、経営陣と現場が一体となり、共通の目標に向かって進む必要があります。

現場の声に耳を傾け、彼らの努力を認め、共に課題を克服していく姿勢を示すこと。それが、真のリーダーシップであり、持続的な成長を実現するための鍵となるでしょう。

マーケティングの役割:新たな「買いたい」を生み出す仕組み作り

マーケティングツールに踊らされるな

マーケティングは、新規顧客を獲得し、既存顧客との関係を強化することで、企業の成長を支える重要な役割を担っています。それは、顧客の興味を引き、自然な形で購買意欲を高めるための仕組み作りと言えるでしょう。

現代のマーケティングツールは、20年前と比較すると飛躍的に進化しました。しかし、ツールに振り回されてしまっては本末転倒です。重要なのは、自社の事業の本質、提供できる価値、そしてターゲットとする顧客を明確にすることです。特に、「今の時代において」どのような価値を既存顧客に提供できるのかを深く考える必要があります。

この原理原則に基づいて、既存顧客向けのマーケティングと新規顧客向けのマーケティングをそれぞれ戦略的に展開していくことが重要です。デジタルマーケティング、昔ながらの展示会、YouTubeなどの動画コンテンツ、あるいはこれらの組み合わせなど、最適な手段は企業や顧客によって異なります。ツールはあくまで目的を達成するための手段であり、ツールありきで考えるのではなく、顧客のニーズを満たすための最適な方法を選択する必要があります。

ツールを売り込む営業マンの言葉に惑わされず、自社のマーケティング戦略を冷静に分析し、最適な手段を選択することが重要です。しかし同時に、彼らの「売り込み」から学ぶことも多くあります。なぜあなたは彼らの「売り込み」に対して「買いたい」と感じたのか、そのストーリーを深く分析することで、自社のマーケティングにも活かせる貴重なヒントを得ることができるでしょう。

効果的なマーケティングは、顧客とのエンゲージメントを高め、長期的な関係を構築します。それは、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客のロイヤリティ向上にもつながり、安定した収益基盤を築く上で欠かせません。

現代の多様なマーケティングツールを駆使し、顧客の心を動かすメッセージを発信することで、新たな「買いたい」を生み出す仕組みを構築し、企業の成長を加速させましょう。

ポイントは、

  • 顧客中心のマーケティング: 常に顧客の視点に立ち、彼らのニーズやウォンツを理解すること。
  • 多様なマーケティングチャネルの活用: デジタルとアナログ、それぞれの特性を理解し、最適な組み合わせを見つけること。
  • 効果測定と改善: マーケティング施策の効果を測定し、改善を繰り返すことで、より効果的なマーケティング戦略を構築すること。

これらのポイントを押さえることで、マーケティングは企業の成長を力強く後押しするでしょう。

売ることはただの目標ではなく、企業の生命線

WAKOH&CO.は売れる仕組みづくりをサポートします。

売ることは、単なる目標達成のための手段ではありません。それは、企業の存続そのものをかけた、まさに生命線とも呼べる活動です。

「売ること」から目を背けず、真正面から向き合いましょう。そして、「売り込む」のではなく、既存顧客からも新規顧客からも「買いたい」と言われ続ける「売れる仕組み」を、共に作り上げていきましょう。

WAKOH&CO.は、それぞれの企業が持つDNA、その核となる強みを深く理解し、どのような顧客にどのような価値を提供できるのかを共に探求します。そして、その価値を最大限に引き出すために、短期、中期、長期にわたる戦略を、チームの一員として共に考え、行動に移していきます。

変化し続ける外部環境を、恐れず、むしろ好機と捉えましょう。変化を歓迎し、子供がゲームに夢中になるように、顧客が「買いたい」と感じる革新的な仕組みを、共に創り出していきましょう。

私たちは、貴社の挑戦を全力でサポートします。共に成長し、共に成功を掴むために、WAKOH&CO.は常に伴走し続けます。

共に、顧客に愛され、社会に貢献する企業を目指しましょう。

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この記事を書いた人

K.Komatsuのアバター K.Komatsu Creative Director

WAKOH & CO. 代表取締役
各企業や個人が持つ独自の強みと核心(DNA)を活かし、絶えず変化する世界の中で価値を創造します。和を以て、理想の実現へと導く伴走者として、企業の成長をサポートします。

オートメーション産業、IT産業、アパレル産業におけるセールス、マーケティング、コンテンツ・クリエイションの豊富な経験と実績を持ち、多角的な視点からビジネスの成功を支援します。

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