前回、私たちは「自分自身の問い」を立てることの重要性について話しました。

上司の指示でも、顧客の要望でも、業界の常識でもない。あなた自身が見つけた問いこそが、顧客の未来を変える価値を生み出す。
しかし、問いを立てただけでは、何も始まりません。
その問いに対して、どう答えを導き出すか。そのプロセスこそが、あなたの思考の質を決めるのです。
ここで、あなた自身に問いかけてほしい。
今、あなたが手にしているその答えは、本当にあなた自身が「考えた」ものですか?
「Perplexityれば分かる」の罠
ChatGPT、Perplexity、Claude、社内ナレッジベース…
答えは、数秒で手に入る時代です。
問いを投げれば、AIが瞬時に答えを返してくれる。検索すれば、誰かが既に考えた最適解が見つかる。この便利さに、私たちは慣れすぎてしまいました。
しかし、ここに決定的な罠があります。
答えを「探す」ことと、答えを「考える」ことは、全く違う。
探すことは、既に存在する答えを見つける作業です。それは効率的で、確実で、リスクがない。しかし、そこには「あなたの思考」は存在しません。
考えることは、まだ存在しない答えを創り出す行為です。それは苦しく、不確実で、時に失敗する。しかし、そのプロセスの中にこそ、あなただけのオリジナリティが宿るのです。
ChatGPTは、あなたの思考の代理人ではない
誤解しないでください。
ChatGPTやPerplexityを使うことが悪いわけではありません。私自身、毎日使っています。
重要なのは、使い方です。
私がAIに投げる問いは、すでに私の頭の中で「考えた」ものです。核となるコアメッセージ、問題提起、切り口、構造…それらは全て、私自身が考え抜いた結果です。
AIはそれを「整理」し、「拡張」し、「精緻化」してくれる。しかし、思考の種を生み出すのは、私自身です。
もしあなたが、AIに「何を書けばいいか教えて」と聞いているなら、それは思考を外注している。
もしあなたが、AIに「この問題の答えを教えて」と聞いているなら、それは答えを探しているだけだ。
本当に価値ある問いは、AIには投げられない。なぜなら、それはまだ言語化されていないからです。
インプットの質が、すべてを決める

Perplexityに何を聞くか。ChatGPTにどう問いかけるか。
それは、あなたの思考の質そのものです。
曖昧な問いを投げれば、曖昧な答えが返ってくる。表面的な問いを投げれば、表面的な答えしか得られない。
逆に、あなたが深く考え抜いた問いを投げれば、AIはその思考を何倍にも増幅してくれる。
つまり、AIの性能ではなく、あなたのインプットの質が、アウトプットのすべてを決めるのです。
ここで問いたい。
あなたは、AIに問いを投げる前に、どれだけ自分の頭で考えていますか?
「考える苦しみ」から逃げて、すぐにAIに頼っていませんか?
参考にする vs 依存する
AIは、強力な参考資料です。
しかし、参考にすることと依存することは、決定的に違います。
参考にするとは、自分の思考を補強するために外部の知見を活用すること。
依存するとは、自分の思考を放棄して、外部の答えをそのまま使うこと。
前者は、あなたの思考筋力を鍛えます。
後者は、あなたの思考筋力を衰えさせます。
そして、恐ろしいことに、依存は気づかぬうちに進行します。
最初は「ちょっと調べるだけ」だったのが、いつの間にか「AIが言ってたから」が口癖になる。自分の頭で考える前に、まずAIに聞く。そのプロセスを繰り返すうちに、考える力そのものが、劣化していくのです。
考える苦しみを、放棄するな

答えのない問いと向き合うことは、苦しい。
すぐに答えが見つからないことは、不安だ。
しかし、その苦しみの中でこそ、あなたの思考は鍛えられ、あなただけの答えが生まれる。
AIは、その苦しみを代わりに引き受けてはくれません。
思考のプロセスを外注した瞬間、あなたのオリジナリティは消える。
次回は、その思考の「出力」について話します。
あなたの企画書は、誰の承認を求めているのか。顧客を驚かせるために書いているのか、それとも上司に怒られないために書いているのか。
出力の質は、「誰に見せるか」で決まる。その話をしましょう。



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