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潜在顧客への価値提供の落とし穴:その活動は本当に価値提供者としての営業に直結しているか?

目次

ミーティングの手応えとその後の展開

価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)としての営業担当・川上さんは新規顧客開拓のためにA社の高橋部長と初めてのミーティングを終えました。事前に徹底的なリサーチを行い、A社が抱える課題や業界のトレンドを把握していたため、ミーティングは非常に順調に進みました。高橋部長は川上さんの提案に興味を示し、「また、こちらから連絡を差し上げます」と告げられ、A社を後にしました。

ミーティング後、川上さんはCRMに営業報告としてProbability(受注硬度) 80%とレポーティングしました。手応えを感じた彼は、先ずミーティングで紹介したPDF資料をメール送付。次のステップとして詳細な提案書を作成し、高橋部長に送る準備を進めていました。しかし、翌週になっても高橋部長からのレスポンスが無く、メールや電話にも全く反応がありません。川上さんは困惑し、何度も連絡を試みましたが、状況は変わりませんでした。

そんな中、川上さんのもとに高橋部長から突然の連絡がありました。「予算が取れなくなった。優先順位が変わってしまった。しかし、今後、このプロジェクトは必ずやることになる。だから、他社比較もしなければならない。一緒にやって頂けると役員説明時にも助かるんだが…」という期待を仄めかす言葉に、川上さんは再び希望を抱きました。高橋部長が自社の提案に対してまだ関心を持っていると感じた川上さんは、熱心に競合分析を始めることにしました。

川上さんは他社の製品やサービスを徹底的に調べ、自社の提案がいかに優れているかを証明するための資料を作成し始めました。彼は、競合他社の強みと弱みなどSWOT分析し、自社の提案がA社の課題をどのように解決できるかを詳細に説明する資料を準備しました。高橋部長の期待に応えたいという一心で、昼夜を問わず作業に没頭しました。

しかし、その様子を見ていた川上さんの上司である信夫営業課長は、彼の行動に疑問を抱きました。「遅くまでお疲れ様です。最近、遅くまで資料作りに励んでいますね。たまには早めに帰宅してはどうですか?」信夫課長は、川上さんの作っているppt資料はA社向けであることをディスプレイで確認しました。

「いや、今度、役員会で説明してくれるようなので、競合他社比較も含めて纏めております。」川上さんは作業を切らさないために一瞬だけ信夫課長と目を合わせるだけでした。

「川上さん、CRMを読ませて頂いたんですが、A社は本プロジェクトの予算を組まれているんでしたっけ?」信夫課長は川上さんへ尋ねました。

「いや、もともとは予算取れていたようですが、優先順位が変わったとの連絡を受けました。しかし、高橋部長によると、今後、このプロジェクトは、やることになる、とのことなんです」

信夫課長は腕組みをしながら、少し沈黙の時間を設けました。「うーん、川上さん、ありがとう。でも、現時点では予算は無くなってしまった・・・という認識で良いですよね?」と問いかけました。川上さんの作業する手が止まり、川上さんは、また一度だけ信夫課長と目を合わしてから視線を下におろし、彼もまた腕を抱えました。

信夫課長は、顧客に価値を提供することが重要である一方で、自社にも利益をもたらす必要があることを強調しました。「適度な資料作りは必要だが、現時点において、その先に両社のベネフィットがありますかね?予算が無くなってしまったのであれば、SaaVとして我々の取るべき次の行動は何ですかね?」とアドバイスを送りました。

川上さんは、信夫課長の言葉にハッとさせられました。彼は自分の行動が本当にSaaVとしての役割を果たしているのか、自問せざるを得ませんでした。そして、競合分析に多くの時間を費やすことが果たして自社にとっても価値のある行動なのか、改めて考え直すことになったのです。

こうして、川上さんは価値創造営業(SaaV)の本質と、自分の営業活動の在り方について深く見直す機会を得ることとなりました。

課長のアドバイス:本当の価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)とは何か?

川上さんの行動を見た信夫課長は、彼の姿勢に疑問を感じました。川上さんが高橋部長のために熱心に競合分析を行っていることは評価できるが、その行動が本当に価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)としての役割を果たしているかどうかを確認する必要があると感じたのです。

信夫課長は、顧客のためだけに動くのではなく、自社にも価値をもたらすことの重要性を強調しました。「我々の役割は、高橋部長に他社比較の資料を提供することではない。競合分析は高橋部長の責任。我々の本当の役割は、我々の製品やサービスがいかに彼らの問題を解決するかを示すことだ。他社の情報を集めることに時間を費やすのは、本当に価値がある行動だろうか?」

信夫課長の言葉に、川上さんはハッとさせられました。自分が顧客の期待に応えようとするあまり、自社の利益を見失っていたことに気付かされたのです。信夫課長はさらに続けました。「価値創造営業としての真の価値提供は、顧客と我々双方にとって有益でなければならない。今、高橋部長の要望に応えるために競合分析を行うことは、我々にとってどれほどの利益をもたらすのかを考え直そう。」

川上さんは、自分の行動が一方的な価値提供に偏っていたことを反省しました。そして、信夫課長のアドバイスを受け入れ、次の行動を見直すことに決めました。彼は、高橋部長との次のステップを考え、より効果的なアプローチを模索し始めました。

顧客に対して誠実に価値を提供することは大切だが、それが自社の利益とバランスが取れているかを常に確認しなければならない」と信夫課長は締めくくりました。このアドバイスにより、川上さんは価値創造営業の本質を再認識し、営業活動の在り方を見直すきっかけを得ることができました。

営業活動の本質:価値提供と効率的な時間の使い方

営業活動の本質は、顧客に対して価値を提供することにあります。しかし、その価値提供が一方的なものでは、本当の意味での成果を得ることはできません。川上さんのように、顧客のために競合分析を行うことが必ずしも正しい行動とは言えない場合もあります。

川上さんは高橋部長の要望に応えるために熱心に競合分析を行っていましたが、信夫課長のアドバイスを受け、自分の行動が本当に価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)としての役割を果たしているかを見直すことになりました。ここで重要なのは、顧客に対して価値を提供する際に、それが自社にも利益をもたらすかどうかを考えることです。

A社において予算がなくなった現時点で、川上さんが取るべき行動は、時間の使い方を見直し、新たな潜在顧客へのアプローチに切り替えることです。資料作成に多くの時間を費やすことは、一見すると熱心な営業活動に見えますが、それが必ずしも営業の本質に直結しているわけではありません。むしろ、見込みの低い案件に時間を割きすぎることで、本来注力すべき新たな商談機会を逃してしまうリスクがあります。

価値創造営業(SaaV)としての営業活動は、常に自分の時間の使い方を見直し、どれだけの時間を本当に価値のある営業活動に投じているかを自問する必要があります。例えば、見込みの低い案件に時間を費やすよりも、新たな商談機会を創出し、潜在顧客に対して効果的なアプローチを行うことに注力すべきです。

具体的な方法としては、定期的に営業活動を振り返り、どの活動が最も効果的であったかを分析することが挙げられます。また、見込みの低い案件については、適度な資料作成に留め、次のアクションに素早く移行することが求められます。さらに、潜在顧客リストを常に更新し、新たな商談機会を見逃さないようにすることも重要です。

価値創造営業(SaaV)としての営業活動は、顧客に対して価値を提供するだけでなく、自社の利益にも繋がるバランスの取れたアプローチが求められます。川上さんも、自分の行動を見直し、効率的な時間の使い方を考えることで、真のSaaVとしての役割を果たすことができるでしょう。

結論と行動の呼びかけ:真の価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)をめざして

営業活動の時間配分は非常に難しいものです。特に、川上さんのように現場で顧客と直接やり取りをしている営業担当者にとって、顧客の期待に応えたいという思いが強ければ強いほど、その時間管理は一層困難になります。大きなアカウントや信頼を得た顧客からの要求に対しては、つい一生懸命に応じようとしてしまうのは自然なことです。しかし、価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)としての役割を果たすためには、常に自分の時間の使い方を見直し、効率的な営業活動を心がける必要があります。

私自身も過去に同様の経験と失敗をしてきたからこそ、ここでその教訓を共有したいと思います。営業活動の時間配分を個人で常にメンテナンスすることは難しいです。だからこそ、チームでの時間配分の確認とメンテナンスの仕組み化が重要です。例えば、日次や週次での業務投下時間とその配分を視覚化する仕組みを導入することで、営業活動の効率を向上させることができます。

価値創造営業(SaaV)は、顧客のために一方的に価値提供に尽くすことを意味しません。川上さんがA社の高橋部長の他社比較資料作成を手伝いかけたのは、顧客に対する熱意からくるものでしたが、それは本当に川上さんの仕事でしょうか?他社を比較検討するのはA社・高橋部長の仕事であり、川上さんの役割は、いかに自社の製品やサービスが顧客の課題を解決できるかを示すことです。

読者の皆さんも、営業活動の本質を見直し、本当に価値を提供できるタイミングを見極めましょう。タイミングが合わない場合は、次の潜在顧客へのアプローチに切り替えるべきです。価値創造営業(SaaV)としての触媒役を果たすためには、自分が投じている時間の何割を本当に価値のある営業活動に使っているかを確認し、効率的な営業活動を目指すことが求められます。

具体的な行動の呼びかけとして、まずは自分の営業活動を振り返り、現在の時間配分を見直しましょう。例えば、見込みの低い案件に多くの時間を費やしている場合、それを減らし、新たな潜在顧客へのアプローチに時間を割くようにします。さらに、チームでの定期的なミーティングを通じて、お互いの時間配分を確認し合い、必要な改善を行うことも効果的です。

読者の皆さんへ質問とディスカッションポイント

•   「あなたは現在、どのように営業活動の時間配分を管理していますか?」
•   「チームでの時間配分の確認と改善の仕組みはありますか?」
•   「SaaVとしての役割を果たすために、次にどのような行動を取るべきか考えてみましょう。」

価値創造営業に直結した行動をとり、価値提供のタイミングを見極めることで、より効果的な営業活動を展開していきましょう。そして、顧客との信頼関係を築きながらも、自社の利益を見失わないバランスの取れた営業活動を実現しましょう。

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この記事を書いた人

K.Komatsuのアバター K.Komatsu Creative Director

WAKOH & CO. 代表取締役
各企業や個人が持つ独自の強みと核心(DNA)を活かし、絶えず変化する世界の中で価値を創造します。和を以て、理想の実現へと導く伴走者として、企業の成長をサポートします。

オートメーション産業、IT産業、アパレル産業におけるセールス、マーケティング、コンテンツ・クリエイションの豊富な経験と実績を持ち、多角的な視点からビジネスの成功を支援します。

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