信夫課長とのランチ:価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)の本質を見つめ直す
川上さんは、A社の案件が無くなり、他の新規顧客へのアプローチもうまくいかない状況に焦燥感を抱いていました。目標達成率は50%にとどまり、同期の田中さんはすでに80%に達していることから、プレッシャーは増すばかりです。川上さんは、ストロングチューハイを一晩で3本も空けるようになり、遅刻ギリギリで出社する日が続いていました。そんな中、信夫課長が川上さんをランチに誘い出しました。
定食屋に入ると、川上さんは少し緊張しながらも信夫課長の視線を避けて座りました。「最近どう?」と、信夫課長は冷たいおしぼりで手を拭きながら、軽いトーンで尋ねました。「いや、何とか目標に向けやってます。まだまだ数字は足りてないすけどね…」と川上さんは、頭痛を感じながら答えました。前夜のアルコールがまだ抜けきっておらず、体内に残るアセトアルデヒドのせいで体調も優れません。
信夫課長は川上さんの様子に気付き、少し間を置いてから尋ねました。「最近、出社も遅いようだし、なんか疲れているようにも見えるんだけど、何かありましたか?」
川上さんは一瞬戸惑いながらも、重い口を開きました。「実は…営業職が自分に向いてないんじゃないかなと…。他のキャリアを考えた方がいいんじゃないかって思うことが増えてきて…」
信夫課長は驚くことなく、川上さんの話をじっくりと聞きました。「そうですか。それは大変・・・。もしだったら、何が一番しんどいと感じているのか、ちょっと少し詳しく聞かせてもらえますか?」
「数字が全然達成できていないことです。同僚の田中はもう80%も達成していて、プレッシャーがすごいすね。それに、最近は顧客の反応も良くなくて、自分の営業のやり方が間違っているんじゃないかって思ってしまいます」と川上さんは視線を落としながら話しました。
信夫課長はうなずきながら、「なるほど、数字のプレッシャーは確かに大きいですよね。でも、営業はただ数字を追うだけではないと思いますよ。川上さんは、営業の本質は何だと思いますか?」と問いかけました。
川上さんは少し考え「お客様に価値を提供することだと思います。でも、最近はその価値提供がうまくできていない気がするんす…」
信夫課長は微笑み、「その通りだと思います。営業の本質は価値を提供する。価値創造営業、つまりSales as a Value providerの考えで、三方よしの実現が重要だと思います。数字はその結果としてついてくるものじゃないですかね。どのようにお客様に価値を提供できるか、改めて考えてみませんか?」
川上さんは信夫課長の言葉に少し救われた気持ちになりましたが、まだ心の中には不安が残っています。「でも、自分が今やっていることが本当に価値を提供できているのか・・・」と川上さんは打ち明けました。
信夫課長は頷き、「私も同じような経験をしてきました。我々がどうやって潜在顧客へ価値を提供できるか、次の営業会議でも一緒に考えてみましょうよ。それが結果として数字に繋がるはずです。あと、出来ればもう一度、前回の1 on 1ミーティングMoM(Minutes of Meeting,議事録)を読んでみてください。」
川上さんはその言葉に少しだけ心が軽くなりましたが、1 on 1 ミーティングの存在について改めてはっとさせられました。それはこの組織と川上さんが向かっている方向性が書いてある大事なものだからです。
チームで与えられたファンクションを全うする大切さ
会社は学校ではありません。各社員が自らの役割と責任を全うし、チーム全体の目標達成に貢献することが求められます。チームで与えられたファンクション(機能)をしっかりと果たすことが、組織全体の成功に繋がります。これは特に営業職において重要です。
営業はしばしば孤独な戦いと見なされがちですが、実際にはチームの一員としての役割が大きいです。営業活動には、マーケティング部門、営業サポート部門、技術部門など、さまざまな部門との連携が不可欠です。それぞれの部門が自分の役割を全うし、営業が顧客に価値を提供するためのサポートを行います。このように、チーム全体で協力し合うことで、個々の営業担当者がより効果的に働くことができるのです。
また、数字は追われるものではなく、追うものです。数字の達成は重要ですが、それが唯一の目的ではありません。営業活動は、顧客に価値を提供し、その結果として数字がついてくるというプロセスです。数字だけを追いかけると、短期的な成果に囚われ、長期的な関係構築や信頼の醸成が疎かになりがちです。重要なのは、数字を目標として設定し、その達成に向けて日々の活動を積み重ねることです。
営業職をゲームのように仲間と楽しむことも大切です。チームで目標を共有し、お互いにサポートし合うことで、仕事の楽しさが増し、モチベーションも向上します。営業の成功は、個人の努力だけでなく、チーム全体の協力によって達成されるものです。仲間とのコミュニケーションを大切にし、共に成長し、成功を分かち合うことが重要です。
このように、会社は学校とは異なり、自らの役割を全うし、チーム全体で目標を達成することが求められます。数字は追うものであり、チームで楽しみながら目標に向かって努力することが、営業職の成功に繋がります。営業活動は決して孤独な戦いではなく、仲間と共に成長し、成功を目指すべきものです。
チームワークの重要性:外資系での経験から学んだこと、優先したこと
私が外資系企業で働いていた時、チームワークの重要性を強く感じました。価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)を実現するには、個々の営業担当者が自分の役割を全うしつつ、チーム全体で協力し合うことが不可欠です。このアプローチは、サッカーや野球のチームプレーに似ています。各プレイヤーが自分のポジションでベストを尽くすことで、チーム全体の達成に貢献するのです。
外資系企業と聞くと、個人主義や成果主義を連想するかもしれませんが、実際にはそうではありません。個々の成果も重要ですが、全体としてのゴールが達成されなければ、個々の成果も意味を持たないのです。私自身が外資系企業で優先していたのは、如何にチームとして結果を出すかということでした。そのためには、チームメンバーとのコミュニケーションが不可欠です。お互いを理解し合い、協力し合うことが、成功への鍵となります。
この経験から学んだことの一つは、コミュニケーションの重要性です。チームメンバーとの定期的なミーティングや何気ない立ち話しを通じて、情報を共有し、問題点や課題を認識することにも役立ちます。このようなコミュニケーションの風土が、個々のメンバーが自分の役割を理解し、効果的に遂行するための基盤となっていました。
また、外資系企業では、各自の責任が明確に定められていました。営業担当者は自分の目標と役割を明確に理解し、それに基づいて行動することが求められました。これは、個々のメンバーが自分の仕事に対して責任を持ち、チーム全体の目標達成に向けて協力するための重要な要素でした。
川上さんも、信夫課長や他の同僚と協力しながら、自分の役割を果たすことの重要性を再認識しました。営業活動を個人の努力だけでなく、チーム全体で支えることで、より高い成果を上げることができるのです。例えば、営業担当者が顧客との関係構築に専念できるように、マーケティング部門がリードジェネレーションをサポートし、技術部門が製品のデモンストレーションを行うといった連携が行われます。このような協力体制が、顧客に対する価値提供を最大化し、結果として営業成績の向上に繋がるのです。
さらに、チームワークを優先することで得られるもう一つの利点は、多様性の活用です。異なるバックグラウンドや視点を持つメンバーが集まることで、創造的な解決策が生まれやすくなります。「そうやって、考える?」と多様な意見があります。それらを尊重し、互いの強みを活かすことで、チーム全体のパフォーマンスが向上するのです。
ビジネスは「戦い」ではなく「知恵」のゲーム:価値創造営業(SaaV)で築く新しい営業の形
営業活動はよく戦略や戦術に例えられ、「戦い」として表現されることが多いですが、これは昭和ニズムに引っ張られた古い考え方です。ビジネスとは本来、競争や勝負ではなく、三方よしを実現するための知恵の勝負なのです。この視点から考えると、営業は戦いではなく、知恵と工夫で顧客に価値を提供することが重要なのです。
価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)は、この価値提供の考え方を体現しています。価値創造営業(SaaV)は押し売りをしない、必要のないタイミングで売り込まないというコンセプトに基づいており、買い手よし、売り手よし、世間よしを目指しています。テクノロジーを駆使して世界の不便を取り除くことが価値創造営業(SaaV)の使命であり、そのためには知恵と工夫が不可欠です。
営業は最前線で戦っているという表現もまた誤解を招きます。価値創造営業(SaaV)は戦いではなく、チーム全体で知恵を出し合い、顧客に最適な解決策を提供することに重点を置いています。例えば、自社よりも優れた製品があれば、それを顧客に使っていただくのが普通です。それを防ぐために戦うのではなく、知恵を使って自社の価値を高め、顧客にとって最適な解決策を提供することが求められます。
この考え方に基づけば、営業活動は競争を超えた協力の場となります。チーム全体が一丸となって顧客に価値を提供するために動くことで、結果として高い成果を上げることができます。例えば、営業担当者が顧客のニーズを的確に捉え、その情報をマーケティング部門や技術部門と共有することで、最適なソリューションを提供する体制を整えることができます。
ビジネスは戦争ではなく、知恵のゲーム、比べっこです。昭和ニズムに縛られた戦略や戦術の考え方を捨て、価値創造営業(SaaV)の理念に基づいて、価値提供型の営業活動を実践しましょう。これにより、顧客にとっても自社にとっても最良の結果を生み出すことができるのです。
読者の皆さんも、営業活動において知恵と工夫を最大限に活用し、顧客に価値を提供することを目指してください。価値創造営業(SaaV)のアプローチを取り入れることで、戦いではなく協力の場としての営業活動を実現し、より良いビジネス環境を築いていきましょう。
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