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短期利益と長期パートナーシップをつなぐ:営業組織の新たな可能性

営業とマーケティングのOne team
目次

営業とマーケティングが議論する「カスタマージャーニー」と営業現場の進化

営業とマーケティングのOne team

↑前回までのあらすじはこちら。

静かな会議室に、前回のミーティングで使われた「感情」「感覚」「思考」「行動」の4つのキーワードが大きく貼り出されている。

これは、展示会を含むカスタマージャーニー全体をデザインし、顧客体験を深く掘り下げるために設定された指針だ。ホワイトボードの前には村山(マーケティング部長)が立ち、先の議論を引き継ぐように声を上げる。

「田中さん、川上さん、前回は“展示会からどうリードを獲得し、カスタマージャーニーに落とし込むか”に焦点を当てましたよね。AさんやBさんといったペルソナごとに、どのタイミングで感情が動くのかを可視化した。でも、この“設計図”だけでは絵に描いた餅になりかねない。肝心なのは、営業組織が実際にこのジャーニーをどう形にしていくか、ですよ。」

席に座る田中(マーケティング課員)は、展示会のフォローアップメモを手元で確認しながら応じる。

「これまでの展示会では問い合わせは増えたんですが、そこから先の顧客体験がどうしても断片的になりがちで……。“感情”を刺激するようなフォローを入れたくても、現場の営業は“質の悪いリード数が多すぎる”とか“短期クロージング優先”といったプレッシャーが発生してしまうんです。」

「実はそれ、私も感じてます。」と川上(SaaV:Sales as a Value provider営業)がうなずく。

「SaaVを掲げて“顧客の成功”を目指したいのに、展示会で溜まったリスト全部を平等にフォローするのは不可能に近い。結果、どうしても数字ベースの優先度づけに引っ張られてしまって、顧客の思考や感覚に寄り添う余裕がなくなるんですよ。」

村山さんはホワイトボードの4つのキーワードの下に「内側の力」と書き足し、続ける。

「前回の記事でも強調したように、カスタマージャーニーのデザインは“下図”にすぎない。本当に大切なのは営業現場がその本質を理解し、組織全体で“一貫性のある顧客体験”を提供すること。展示会で得られたリードを活かして、どうやって感情・感覚・思考・行動を最適に導くか──ここが次の大きなテーマだと思うんです。」

「課題は明確ですね。」田中が再度メモを取りながらうなずく。「このジャーニー設計と現実の数字目標をうまく両立させるために、私たちマーケティング部としてもフォローの仕組みや優先度の考え方を整理する必要がある。営業現場の声も取り入れて、一緒に進化を目指しましょう。」

「賛成です。何か実践策を具体的に検討しましょうか?」川上の目がきらりと光る。

こうして、前回の記事で提示されたカスタマージャーニーの“設計”を、いよいよ“現場でどう活かすか”という本質的な議論が始まった。展示会での新規リードを出発点に、組織全体の内側の力を強化しながら、顧客が求める価値を実現する“未来の営業”像──3人の議論はますます熱を帯びていく。

「カスタマージャーニー×営業の意識変革」の要点を解き明かす

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展示会で得られたリードを戦略的に活かすためには、営業担当者一人ひとりが顧客の置かれている状況をどれだけ深く理解し、それに基づいたコミュニケーションを行えるかが鍵となります。ただし、会議の声にもあったように、企業には短期的な数字目標を達成しなければならない現実もある。そこで私たちは、両立を図るためのポイントを大きく3つに整理しています。

 まず「情報の一元管理」。展示会やオンラインで獲得したリード情報は、部門が違えばフォーマットもバラバラになりがちです。これを統一したCRMやマーケティングオートメーションに集約し、“顧客が欲しい情報”をタイミングよく提供する仕組みを整備すれば、営業担当者の「感覚頼み」ではなく、データに基づいた動きが可能になります。

次に「顧客のインサイトを共有する文化づくり」。単に表面上の数値や属性を追うだけでは、本当の感情や悩みに踏み込むことは難しい。そこで、展示会でリアルに交わされたやり取り(コンタクトリスト!)やメール、商談メモな定性的情報を社内で共有し、顧客がどの段階でどんな不安や期待を抱いているかを組織全体で見える化します。

たとえば週次のミーティングで、営業だけでなくマーケやカスタマーサクセス部門も参加し、顧客の声を具体的に取り上げる。それによって、「いつ」「どのフェーズで」「何が刺さるか」の共通理解を深められます。

そして「営業を価値創造の推進者と捉える視点」。昭和的な「売上げありき」の営業観ではなく、SaaV(Sales as a Value provider)の考え方を組織に根づかせることで、顧客が抱える課題解決を主軸とした営業活動へ移行できます。結果として、短期の売上確保だけでなく、長期的な信頼獲得による継続案件やリピート、さらには紹介まで生まれやすくなるのです。

この3点を同時に進めるためには、トップマネジメントの意志決定と、日々現場で実行する営業担当者・マーケ担当者の連携が不可欠です。WAKOH&CO.では、各社の状況に合わせたカスタマージャーニー再設計から教育プログラムの構築まで、伴走型のサポートをご提供しています。単なるツール導入やテクニック論にとどまらず、企業文化そのものを変革し、顧客の「感情・感覚・思考・行動」に寄り添う“未来の営業組織”を共に創り上げましょう。

短期成果と長期関係を結ぶ“実装力”――理想論を現場で活かすために

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カスタマージャーニーの再設計と営業組織の変革が交わる領域では、「理想の顧客体験を追求するあまり、現場での実行がおろそかになる」というジレンマが発生しがちです。

どれだけ洗練されたプランを描いても、それを担う営業担当者が疲弊していては意味を成しません。そこで重要になるのが実装力。WAKOH&CO.では、この実装力を高めるために「教育」「制度」「フォローアップ」の3つを統合的に整備するアプローチを推奨しています。

まず教育では、SaaV(Sales as a Value provider)の本質を全員が理解することが肝要です。「なぜ顧客体験が重要なのか」を腑に落とす研修やワークショップを行い、それを営業活動の中でどう活かすかを具体的に学びます。

次に、現場が安心して実践を継続できるようにするための制度づくりも欠かせません。短期の売上だけでなく、顧客との長期的な関係性や満足度を評価に組み込む仕組みを導入すれば、担当者は“一度きりの受注”ではなく、“継続的な信頼づくり”にリソースを投じやすくなります。

さらに、制度を形骸化させないためには、フォローアップが必要です。月次や四半期のレビュー会議で、成果指標とあわせて「顧客にどのような体験価値を提供できたか」を定性的に振り返る場を設けることが有効でしょう。具体例を共有し、成功事例だけでなく改善が必要な点もオープンに話し合うことで、組織内に“試行錯誤を歓迎する文化”が根づきます。

こうした教育・制度・フォローアップの三位一体を確立することで、短期の数字目標と長期的な顧客関係の両立が実現しやすくなります。単なる理想論ではなく、“日々の実行レベルで持続可能な変化”を起こすことこそが、展示会でのリード活用から大きなビジネス成果へとつなぐカギなのです。

“売り込まずに売る”営業組織の未来──次回へ続くステップ

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営業組織が真に「売り込まずに売る」境地に到達するためには、単なるツール導入や行動マニュアルだけでは不十分です。最終的に大切なのは「自社・顧客・社会」という三方すべてにとっての価値を生み出し、長期的なパートナーシップを築くというビジョンを全社で共有できるかどうか。

まず私たちが注目するのは、従来の「営業=数字を獲得するための部隊」という枠組みを超えて、営業を価値創造の触媒に位置づける考え方です。前回のブログでも強調したとおり、展示会やオンライン、あるいは対面商談など、多様化した顧客接点の中で「どのフェーズで何を感じているのか」を深く理解し、同じ目線で伴走することが欠かせません。そうした伴走姿勢こそが“押し売り感”を消し、結果的に自然な形で契約や継続利用へと結びつくエンジンになるのです。

また、リーダーシップと組織文化も大きなポイントとなります。昭和的な営業マネジメントでは、営業担当者が追い立てられ、数字に縛られるばかりでした。しかし未来の営業組織では、トップマネジメントが率先してSaaV(Sales as a Value provider)の理念を浸透させ、短期の受注だけでなく「顧客が本当に求めている価値を共に創造する」カルチャーを全社に根づかせる必要があります。ただ、勘違いをさせてはいけないのは会社は営利組織なので短期的な売上は必須である。

短期KPIと長期KPIの両立を支援する仕組みづくりです。どれだけ長期的な視野を語っても、企業としては目の前の売上がなければ経営は成り立ちません。そこで、“今期の売上やクロージング率”を測る短期KPIと、“顧客満足度やリピート率、ブランドロイヤルティ”を測る長期KPIを同時に見える化し、営業組織の評価制度やインセンティブ設計に組み込む仕組みが求められます。これによって、各営業担当が「すぐに受注には至らないが、将来的に重要な顧客との関係性を育む」行為にも正当な評価が得られるようになり、結果として“一度きりではなく、長く信頼されるパートナー”へと立ち位置を高めることができるのです。

もし「自社の営業スタイルを見直し、より持続的な成長を目指したい」「展示会やオンライン施策で得たリードを有効に育てたい」といった想いがおありでしたら、どうぞ遠慮なくWAKOH&CO.にご相談ください。私たちは常に、顧客企業と二人三脚で課題解決に取り組み、あなたの組織に合わせたオーダーメイドのソリューションを共に創り上げていくことをお約束します。

そして次回は、この“売り込まずに売る”状態をどのように検証し、長期的に成果を高めていくか、その具体的な指標と事例をさらに深掘りしていく予定です。短期的な数字だけでなく、顧客の幸福度やブランドとの絆を“見える化”する手法をお伝えします。貴社の営業組織が“未来型”へと進化するための、新たなヒントをお届けします。お読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

K.Komatsuのアバター K.Komatsu Creative Director

WAKOH & CO. 代表取締役
各企業や個人が持つ独自の強みと核心(DNA)を活かし、絶えず変化する世界の中で価値を創造します。和を以て、理想の実現へと導く伴走者として、企業の成長をサポートします。

オートメーション産業、IT産業、アパレル産業におけるセールス、マーケティング、コンテンツ・クリエイションの豊富な経験と実績を持ち、多角的な視点からビジネスの成功を支援します。

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