B2B営業の現場で、こんな違和感を感じたことはないだろうか。「売り込めば売り込むほど、顧客が離れていく」「価格交渉だけで商談が終わってしまう」「差別化しようとしても、結局スペック比較になる」――本記事では、これらの違和感の正体と、それを突破するための新しい営業概念「価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)」の定義と実践の起点について、外資系企業で実証されたアプローチをもとに解説します。
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SaaV(Sales as a Value provider)とは?:価値創造営業の重要性

営業活動は単なる商品やサービスの販売にとどまらず、顧客、自社、社会に価値を提供することが求められています。本記事では「Sales as a Value Provider (SaaV)」というコンセプトを紹介し、その重要性と実践について詳しく解説します。
価値創造営業(SaaV)の基本理念
「価値創造営業(SaaV)」とは、組織としての営業活動が顧客に対して価値を提供するだけでなく、自社および社会に対しても価値を創造することを目的としたアプローチです。この考え方は、従来の営業モデルとは異なります。従来の営業は主に商品やサービスの販売に焦点を当てていましたが、SaaVはより広範な視点で価値の提供を目指します。
ソリューション営業との違い
SaaVとソリューション営業は一見似ているように思えますが、いくつかの重要な違いがあります。ソリューション営業は、ある特定顧客あるいはその産業の問題を解決するための製品やサービスを提供することに重点を置いていますが、SaaVは顧客の問題解決に加え、自社や社会全体に対する持続的な価値創造を重視し、組織として体現します。
三方良しの精神
価値創造営業(SaaV)の中心には、「三方良し」の精神があります。この理念は、ビジネスが成功するためには、顧客(買い手)、自社(売り手)、社会(世間)の三方すべてにとって有益でなければならないという考え方です。近江商人が提唱したこの考え方は、洋の東西問わず持続可能なビジネスの基盤として非常に有効です。
しかし、時代の流れやテクノロジーの進歩が急速に進む現代において、従来の仕事のやり方を踏襲するだけでは、価値創造の面では不十分です。価値創造営業を体現する組織は、顧客の痛み、成りたい理想像に着目し新たなチャレンジを提案することで価値を創造します。しかし、顧客(買い手)において組織を変えることは容易ではありません。それぞれの顧客にそれぞれのやり方・業務慣習などが動いておりますので、直ぐに方向性を変える事はできません。
価値創造営業(SaaV)を体現する組織は時間をかけて顧客の課題や将来に向き合い、海外事例や新しいテクノロジーの利用例、世界のトレンドなどを用いて新たな付加価値を提案し続けるのです。そして、そのチャレンジは自社にとってもこれまでの慣性を変え、価値創造営業(SaaV)が自社にとっても改革の触媒となり、持続可能な利益を生み出し、社会に対してもポジティブな影響を与えることが求められます。
特に、顧客(買い手)にメリットをもたらすと同時に、自社(売り手)にとっても新たなチャレンジ性のあるプロジェクトは、自社の技術力を高め、新たな知財を生み出す機会となります。これにより、自社は従来の業務慣習を打ち破り、ストレッチすることで成長し続けることができるのです。例えば、あるプロジェクトで顧客が求める高度な技術要求に応えることで、自社の技術力が向上し、新たな特許や知識が蓄積されます。これにより、顧客に対しては革新的なソリューションを提供し、自社にとっては長期的な競争力を強化することができるのです。
新しい営業組織の在り方
現代のビジネス環境では、技術革新や市場の変化が急速に進行しています。このような状況下で、企業が競争優位を維持、発展するためには、組織的な営業活動そのものも時代に合わせて進化する必要があります。電話やメールが来ることを待っているだけでは駄目なのです。価値創造営業(SaaV)は、顧客から発信されるニーズに迅速に対応することはもちろんのこと、世界のトレンドや新しいテクノロジーの隆盛、それがもたらす新しいベネフィットに敏感であり続ける必要があります。島国に閉じこもって居るだけでは駄目なのです。組織としてSaaVを導入する必要があり、メンバーを定期的に海外の現場(顧客サイト、現場、展示会、ローカルスタッフとの協業など)へローテーションで送り込まねばならないのです。海外情報をネットで日本語翻訳された記事を読んでいるだけでは足りないのです。時代趨勢や未来の顧客ニーズを予測して先回りしてSaaV組織として価値を提供することを目指さなければならないのです。

価値創造営業(SaaV)の概念を実現する欧州企業たち

私は欧州で最も革新的なファクトリー・オートメーション会社と呼ばれていた、B&Rの日本法人スタートアップに参画しました。この企業では常に「Value」を求められ、その追求は徹底していました。彼らのビジネスの基本姿勢は、常にWin-Winの関係を意識し、それを実現できないビジネスはあっさりと断るというものでした。この経験を通じて、私は「価値創造営業(SaaV)」の概念を深く理解することができました。
長期的な視点での価値提供
私が日本競合企業との価格競争にこだわっていた際、ヘッドクォーターのビジネスデベロップメントメンバーからは、「その方向性は本当に価値があることなのか?」「我々が得られるベネフィットは何なのか?」「このディールが成立した際にはどのような展望が待っているのか?」と問い詰められました。彼らは短期的な利益を追求するのではなく、顧客との長期的なパートナーシップを重視していました。この基本姿勢により、顧客(買い手)のベネフィットのためだけの単なる価格競争に陥ることなく、自社(売り手)にとっても成長できる機会が生まれるのか?新しいチャレンジが含まれているのか?という根本的な姿勢そのものが互いに発展していける関係性を築くことができるのです。
Win-Winの関係構築
欧州企業連合では、ビジネスを始める前から顧客との長期的な関係構築を考慮して行動し、意思決定をしています。大きな企業案件が入っても、短期的な視点ではなく、長期的な視点でこれまでの仕事のやり方で対応出来る点と新しいチャレンジングな点を整理し、互いに切磋琢磨できる関係性であるかを重視します。お客様の言いなりにならず、Win-Winな関係を構築できるかを常に未来志向で考えます。なぜなら、彼らは顧客のことを単なる「お客様」では無く、SaaVを体現する「ビジネスパートナー」として捉えているからです。
未来志向のビジネス
欧州企業連合のアプローチは、常に未来志向です。彼らは、現在の取引が将来にどのような影響を与えるかを常に考慮し、短期的な利益にとらわれることなく、長期的な成功を目指します。量産ビジネスとなる場合は、買い手側が目先の購買量だけを交渉のネタにテーブルにつくことを嫌います。その購買量が何年先に渡って必要とされるのか、そして、その製品やソリューションの先にはどのような展望を持っているのか?どのような未来志向を持っている会社なのかを見定めます。短期思考で自社(売り手)を計算しているのか、それとも長期的な視点視座で自社(売り手)を見ているのかを含め、自社(売り手)が顧客(買い手)を評価します。このようなアプローチにより、顧客との信頼関係を強化することに重点を置き、持続的なビジネス成長を常に模索しています。

価値創造営業(SaaV)の基本概念とマインドセット:実現の難しさ

「価値創造営業 (SaaV)」のコンセプトは非常に魅力的ですが、その実現には困難も伴います。それは、顧客(買い手)、自社(売り手)、社会(世間)に対して持続的な価値を提供することを目指すため、単なる販売活動を超えた視点が必要です。しかし、このアプローチを実践することには、多くの挑戦が伴います。
Win-Winの関係を築く難しさ
価値創造営業の基本姿勢は、「三方よし」や少なくとも「Win-Win」の関係を目指すことです。これは、営業マンが顧客(買い手)に対して価値を提供する一方で、自社(売り手)にも利益をもたらすことを意味します。しかし、現実の営業活動では、顧客からの厳しい値引き要求や納期問題、品質問題、伝票処理問題等の煩雑な条件に直面することが少なくありません。特にBtoBの領域では、営業マンが数字を達成するために、顧客の要求に応じざるを得ない状況もあります。買い手が上位に位置づけられやすい、古くから根付くこの国の商慣習において、あまりにも毅然とした態度はマイナスの意味で目立ってしまう、悪印象を与えてしまうリスクも潜んでいるのです。
案件を断るという選択肢
価値創造営業の基本姿勢を貫くためには、時には顧客の要求を断る勇気が必要です。異常な値引き要求に対して、長期的な関係が築けないと判断した場合、その案件をお断りすることも選択肢の一つです。しかし、案件を断ることで、その顧客との関係が途絶えてしまうリスクもあります。契約がストップし、今後のビジネスチャンスを失う可能性もあるため、この判断は非常に難しいものです。だから、SaaVは組織として動く必要があるのです。これは追って書きます。
基本姿勢に立ち返った交渉
価値創造営業を実現するためには、厳しい交渉にも基本姿勢に立ち返りながら進める必要があります。例えば、顧客と長期的な関係を築くために、年間購入台数に基づく階段価格を設定する、あるいはPoC(概念実証)終了後に再交渉の機会を設けるなどの条件を提示します。また、カスタマーサクセス事例としてのビデオ出演やロゴ借用を条件とすることで、追加の価値を提供しつつ、Win-Winの関係を築くことも模索することが可能です。
知財に関する取り扱い
新規開発要素が大きい場合には、知財に関する取り扱いも重要な検討事項です。顧客との共同開発や新技術の導入において、知的財産権の管理やライセンス契約など、詳細な取り決めが必要になります。これにより、双方が納得できる条件を整え、持続可能な価値提供が実現します。

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