展示会選定会議 – 熱い議論が交錯する
前回までのあらすじはこちら
前回の会議から週末を挟み再び展示会選定会議が開かれました。村山マーケティング部長、マーケティング課員の田中さん、そしてSaaV(Sales as a Value provider)営業の川上さん3人は日の当たる会議室に集まりました。
「おつかれさま。さあ、よろしくお願いいたします。あれから其々考えてきて頂きましたか?」村山部長が仕切る。
「私は、日本食品包装機械工業会主催のFOOMA JAPANに出展すべきだと考えます。」
川上さんは、自信に満ちた声で切り出しました。
「FOOMA JAPANは、来場者数が11万人以上と国内最大級の食品関連展示会です。食品機械メーカーや食品加工業者など、我々のターゲット顧客が多く来場します。また、1,000社以上が出展しており、業界の最新動向を把握する絶好の機会でもあります。」
川上さんの提案に、田中さんは首を傾げました。
「しかし、川上さん、FOOMA JAPANは食品業界に特化した展示会です。我々のSaaSは、食品業界だけでなく、製造業全体に適用可能です。もっと幅広い業界の顧客にアプローチできる展示会の方が良いのではないでしょうか?」
田中さんは、スマート工場展への出展を提案しました。
「スマート工場展は、製造業全体のDXを推進する展示会です。来場者数は3万人ですが、同時開催のネプコンジャパンやオートモーティブワールドを含めると、8万人近くに達します。幅広い業界の企業と接点を持つことができ、新たな顧客開拓に繋がる可能性が高いと考えます。」
川上さんは、田中さんの提案に反論しました。
「しかし、田中さん、スマート工場展の来場者数はFOOMA JAPANの半分以下です。効率的なリード獲得という観点からは、FOOMA JAPANの方が優れているのではないでしょうか?」
二人の意見が対立する中、村山部長が口を開きました。
「ちょっと待って、二人とも。来場者数だけで展示会を選定するのは、本末転倒ではないかしら?」
村山部長は、ホワイトボードに「展示会出展の目的」と書き込みました。
「我々は、なぜ展示会に出展するのか?どんな結果を得たいのか?それを明確にすることが、展示会選定の第一歩です。」
村山部長の言葉に、川上さんと田中さんはハッとしました。彼らは、展示会出展の目的を見失い、数字のみに囚われていたことに気づいたのです。
「それに、川上さん、我々は食品機械や食品プロセスに特化したSaaS企業でしたっけ?」
村山部長の鋭い指摘に、川上さんは言葉を詰まらせました。
「いえ、違います。我々のSaaSは、製造業全体に適用可能です。」
「そうでしょう。であれば、その2択であれば、幅広い業界の顧客にアプローチできるスマート工場展の方が、我々の事業成長にとってより有益なのではないかしら?」
村山部長の言葉に、川上さんは深く頷きました。彼は、自身の視野の狭さに気づき、反省しました。
「村山部長、田中さん、おっしゃる通りです。」
三人は、展示会出展の目的と目標を再確認し、スマート工場展への出展を決定しました。そして、具体的なKPI設定へと議論を進めていきました。
展示会選定の4つのポイント – 目的・目標・予算・マンネリ打破
「展示会選びは、結婚相手選びに似ているかもしれませんね。」
村山部長が、穏やかな笑みを浮かべながら切り出しました。
「フィーリングだけで選んではいけません。将来設計、価値観、経済状況、そして何より、マンネリに陥らない刺激的な関係を築けるかどうか。これらを総合的に判断する必要がありますねぇ。」
田中さんと川上さんは、村山部長の言葉に笑みがこぼれ、少しリラックスしました。
「展示会選定においても、同様の視点が重要です。まず、目的と目標を明確にする必要があります。新規顧客獲得、既存顧客との関係強化、ブランド認知度向上など、展示会を通じて何を達成したいのかを明確にしましょう。次に、予算を考慮する必要があります。展示会出展には、ブース費用、人員費用、販促物制作費など、様々なコストがかかりざっっくり数百万から規模によっては数千万円単位の投資となります。予算内で最大限の効果が得られる展示会を選ぶことが重要です。」
村山部長は、ホワイトボードに「目的・目標」「予算」と書き込み、さらに言葉を続けました。
「そして、マンネリ化からの脱却も重要なポイントです。毎年同じ展示会に出展しているだけでは、新たな顧客層へのアプローチは難しいでしょう。時には、思い切って新しい展示会に挑戦してみることも必要です。」
川上さんは、村山部長の言葉に深く共感しました。彼は、過去の展示会でのマンネリ感を打破し、新たな顧客層を開拓したいと考えていました。
「最後に、データ分析も忘れてはいけません。過去の展示会データや市場調査などを活用し、来場者数、見込み顧客数、競合の出展状況などを分析することで、より効果的な展示会選定が可能になります。」
田中さんは、マーケティング担当者としての視点から、データ分析の重要性を強調しました。
これらの4つのポイントを踏まえ、川上さんたちは、具体的な展示会選定へと議論を進めていきました。
展示会選定の具体的なステップ – ターゲット顧客と市場分析
「では、具体的な展示会選定のプロセスについて考えていきましょう。」
村山部長が切り出すと、田中さんはすかさずパワポを投影させて説明しました。
「まず、ターゲット顧客を明確にするために、ペルソナを設定しました。」
普段はおとなしい田中さんですが、ちょっとだけ自信に満ちた声でプレゼンテーションを始めました。
「ペルソナAは、製造業の中堅企業の生産技術部長、40代男性。人手不足に直面している。しかし、生産性の向上は必達。そして、現状のコスト削減策に課題を感じている。また、つい先日、役員よりDX推進リーダーとして任命されたばかり。兼務で毎日22時に退勤するような状況。情報収集は主に業界誌やオンラインサーチを活用しています。」
川上さんは、田中さんの綿密な分析に感心しました。
村山部長も、田中さんの仕事ぶりに満足げな表情を浮かべました。
「素晴らしい、田中さん。でも、ペルソナを設定するだけでは不十分だと思うな。彼らのカスタマージャーニーを描き出し、展示会との接点を明確にする必要があるね。」
田中さんは、すぐにカスタマージャーニーマップを投影しました。
「はい、その点も考慮しています。ペルソナAは、展示会への参加を通じて、自社および自分の課題解決に繋がる具体的なソリューションや最新技術の情報収集を期待しています。展示会後には、具体的な提案やデモを希望する可能性が高いと考えられます。」
「そして、我々の現状のフェーズを考えると、今は我々のSaaSを多くの現場で活用して頂ければいけない状況であり、事業もスケールしなければなりません。この展示会は、製造業全体のDXを推進する展示会です。我々のSaaSは特定の業界に限定されず、幅広い製造業に適用可能です。この展示会に出展することで、より多くの潜在顧客にアプローチし、新規顧客獲得の可能性を高めることができると考えます。」
田中さんは、さらに具体的なデータを示しました。「来場者数は約3万人ですが、同時開催される関連展示会を含めると、8万人近くに達します。また、事前に運営側にも確認して見積書も取得済みですが、準備期間や予算の面でも、十分に対応可能です。」
川上さんは、田中さんの熱意あふれるプレゼンテーションに心を動かされました。
「OK。これで、ターゲット顧客と展示会の方向性が明確になりましたね。次に、市場分析を行い、競合の出展状況や来場者層などを調査しましょう。そして、これらの情報を基に、具体的なKPIを設定していきます。展示会はゴールではなく、始まりです。展示会後も、初動を早くし、成約に繋げるためのフォローアップ体制もSaaV営業と同時に構築していきましょう。」
三人は、展示会選定からその後のフォローアップまで、一連のプロセスを視野に入れながら、議論を深めていきました。
展示会は未来への投資 – WAKOH&CO.と共に、その価値を最大化しましょう
展示会は、単なる製品やサービスの宣伝の場ではありません。それは、企業の未来を左右する重要な投資であり、新たな顧客との出会いを創出し、自社の掲げるビジョンを来場者に示し、ビジネスを成長させる絶好の機会です。
しかし、展示会への出展は、決して簡単なことではありません。目的や目標の設定、ターゲット顧客の分析、展示ブースのデザイン、集客プロモーション、そして展示会後のフォローアップまで、様々な要素を考慮し、綿密な計画と戦略に基づいて実行する必要があります。
今回の記事では、展示会選定プロセスを事例を通して解説しました。
- 過去の成功体験や慣習にとらわれず、常に変化を恐れず適用すること
- 営業とマーケティングが一体となり、それぞれの強みを活かし合うこと
- 目的と目標を明確化し、具体的なKPIを設定すること
- データ分析に基づいた戦略的な展示会選定を行うこと
- 展示会後も、適切な情報を適切なタイミングで提供し、長期的な関係に繋げるためのフォローアップ体制を構築すること
これらのポイントは、展示会成功のために不可欠な要素です。
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