展示会のKPIは名刺の数ではない|出展する理由と、数える3つの指標

売れる仕組みの六工程の二つ目は「集める」です。定めるで決めた「誰の、どんな痛みに応えるのか」を、どこで、どうやってその人に出会うかに置き換える工程です。この記事はその最初の一本で、展示会に出るかどうか、出るなら何を目標にし、何を数えるのかを、申し込む前にそろえるところを書きます。

目次

「毎年出ているから」は、理由ではない

展示会への出展は、多くの会社で毎年の予定に組み込まれています。去年も出た。同業の会社も出ている。小間はもう押さえてある。こうした事情は、どれも本当のことです。けれど、どれも「なぜ出るのか」への答えにはなっていません。

前著『なぜ展示会をやっても、売上は増えないのか?』で、私は申し込みの前に三つのことを決めてほしいと書きました。

  • 誰の痛みに応えに行くのか(Who)
  • その人は、本当にその会場に来るのか(Where)
  • その人に、ブースで何を持ち帰ってもらうのか(What)

この三つが決まらないまま申し込むと、そのあとの準備はすべて「出ることが決まったから、何かを用意する」という順番になります。装飾を決め、パネルを作り、配る資料を刷る。手を動かしている間は前へ進んでいる気がします。けれど、誰に何を確かめてもらうのかが空いたままなので、会期が終わってから「で、この名刺をどうするのか」という問いだけが残ります。

出展の目的として、よく挙がるのは三つです。新しい顧客に出会う。今の顧客との関係を深める。会社や製品を知ってもらう。どれも大事です。ただ、三つを同じ重さで追うと、ブースの説明も、立つ人の動きも、会期後の対応も、どれも中途半端になります。今回はどれを一番にするのかを、一つ決めておきます。

2015年、私たちは何を数えていたか

会社員時代、欧州系オートメーション企業の日本法人の立ち上げにいたころの話です。2015年、東京ビッグサイトの展示会で、私たちは約300枚の名刺を集めました。「数は集まった」と、上司は喜びました。

半年後、その300枚から商談になったのは5件、受注は1件でした。

いま振り返って思うのは、あのとき私たちが数えていたのは名刺の枚数だった、ということです。ブースは作り込んでいました。役割も決め、記録の用紙も用意していました。けれど、何を1件と数え、いつまでに何を見るのかは、名刺の枚数のところで止まっていました。だから会期が終わった時点では「うまくいった」ように見え、本当の答えは半年たってから出ました。

名刺の枚数は、悪い数字ではありません。ブースにどれだけの人が来たかを示す、確かな事実です。問題は、それを最後の成果と取り違えることです。成果は、こちらが応えられる痛みを持つ相手と、次につながる約束が取れた数のほうにあります。

出展先は、この順で選ぶ

では、どこに出るのか。私は次の順で考えます。

  1. 会社の段階と、使える総予算
  2. 誰の痛みに応えに行くのか
  3. その人は、本当にその会場に来るのか
  4. そこで、何を確かめてもらうのか

最初に会社の段階と総予算を置くのは、出展が会社の判断だからです。立ち上げたばかりの事業と、すでに顧客を抱える事業とでは、同じ展示会に出ても求めるものが違います。総予算には、小間代や装飾費だけでなく、会期中にブースに立つ人の時間と、会期後に一件ずつ連絡し、見直し、次の約束へつなぐ人の時間も入れます。会期後に対応できる量を超えて名刺を集めても、それは来てくれた人を待たせることになります。

二つ目と三つ目は、定めるの工程で決めたことをそのまま使います。来場者の総数が多い展示会が、自社にとってよい展示会とは限りません。見るべきは総数ではなく、会いたい相手がそこに来るかどうかです。主催者が出している来場者の業種や役職の内訳、前回その会場で実際に話せた相手の記録、今の顧客が毎年どの展示会を見に行っているか。確かめられる材料から判断します。

四つ目まで決まると、ブースで何を見せ、何を見せないかが決まります。

四つのどこかがそろわないときは、その回は見送るという判断もあります。出ないことも、会社として決めた一つの選択です。

展示会のKPIは、三つに分けて数える

目標を決めるとき、私は数えるものを三つに分けます。

  • 名刺の数(量):どれだけの人と接点を持てたか
  • 確定したS・Aの数(質):会期後に責任者が見直し、優先して追うと決めた相手が何件か
  • 事前に約束したキーマンとの面談の数(狙い撃ち):会期前から会うと決めていた相手と、実際に会えたか

三つに分けるのは、どれか一つだけを追うと、ほかが見えなくなるからです。量だけを追えば2015年の私たちと同じになります。質だけを追うと、新しい出会いの入口が細くなります。狙い撃ちは、会期前に何をしたかがそのまま表れる数字です。

そして、この三つは途中の数字です。最後の成果は、会期のあと6か月をかけて追います。商談になったか、受注になったか。2015年の答えが半年後に出たように、展示会の成果は会期中には決まりません。

ここで大事なのは、数字の大きさより先に「何を1件と数えるか」を決めることです。名刺を交換しただけの相手と、課題を聞けた相手を、同じ1件に数えるのか。S・Aと呼ぶ条件は何か。会期後、誰が、いつまでに確定するのか。この定義は、記録の用紙を設計するときに一緒に決めます。S〜Dの分け方と用紙の作り方は、次の記事「展示会のコンタクトレポートは、出展前に設計する」で書いています。

営業とマーケティングで、同じ数字を見る

展示会の準備は、マーケティングの部署が担うことが多いと思います。会期後の連絡と商談は、営業の部署が担います。このとき、二つの部署がそれぞれ別の数字を見ていると、展示会は「マーケティングは名刺を集めた。営業が追いかけなかった」「営業は追いかけた。名刺の質が低かった」という言い合いで終わります。

これは、どちらかの部署の腕の問題ではありません。出る前に、同じ数字を一緒に決めていなかったという、会社の段取りの問題です。

だから、上の三つの数字と「何を1件と数えるか」は、両方の部署で一緒に決めます。あわせて、会期後に名刺を回収する人、見直す日時と責任者、確定したS・Aを渡す先も、出展前に決めておきます。役割を分けることと、目標を分けることは違います。役割は分けても、見ている数字は一つにそろえます。

続ける・縮める・やめるは、前回の記録で決める

次の年、同じ展示会にまた出るかどうか。この判断も、前回の記録で決めます。三つの数字と、6か月後の結果が残っていれば、続けるのか、小間を縮めるのか、やめて別の場に移るのかを、記憶や印象ではなく記録で話し合えます。「展示会は意味がない」と感じたときも、まず確かめるのはこの記録です。

会場を変えること自体が目的ではありません。毎年同じ展示会に出ていても、会いたい相手がそこに来ていて、次の約束が取れているなら、続ける理由があります。逆に、どれだけ慣れた会場でも、記録が会いたい相手に届いていないことを示しているなら、見直す時です。会期後の比べ方は、「展示会が終わっても、仕事は終わらない」で書いています。

出展する理由と数えるものがそろったら、次は、会場で何を書き残すのかを決めます。次の記事は「展示会のコンタクトレポートは、出展前に設計する」です。

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この記事を書いた人

K.Komatsuのアバター K.Komatsu 代表取締役 | 売れる仕組みの設計者

WAKOH&CO. 代表取締役
各企業や個人が持つ独自の強みと核心(DNA)を活かし、絶えず変化する世界の中で価値を創造します。和を以て、理想の実現へと導く伴走者として、企業の成長をサポートします。

オートメーション産業、IT産業、アパレル産業におけるセールス、マーケティング、コンテンツ・クリエイションの豊富な経験と実績を持ち、多角的な視点からビジネスの成功を支援します。

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