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B2B営業を成功に導く価値創造営業(SaaV)の全貌:後編

目次

新規潜在顧客訪問の秘訣と出張戦略

名古屋の居酒屋で、価値創造営業について呑みながらディスカッションする信夫課長と川上さん

前回までのあらすじはこちら

「ところで、最近の新規訪問はどうだった?」信夫課長がハイボールを一口飲みながら尋ねました。

「先月、新規訪問で中々うまくいかなかったので、信夫さんにアドバイスをいただいてから、少しずつ見えてきました。」川上さんが思い返しながら話し始めました。

「具体的にどんなことが見えてきたのか教えてくれますか?」信夫課長が興味津々に尋ねました。

「まず、訪問前の徹底的なリサーチですね。信夫課長が教えてくれたように、顧客の業界動向や直面しているであろう課題を徹底的に調べました。その結果、顧客の具体的なニーズに合わせた提案を事前に準備することができました。」川上さんが答えました。

「それは重要ですね。事前準備がしっかりしていると、訪問時に自信を持って話せるからね。でも、実際のところ多くの営業マンは事前に十分なリサーチをしない。なぜだと思います?」信夫課長が続けました。

「忙しかったとか、事前準備の時間が取れなかったとか、トラブル対応をしていたとか、色々な理由があると思います。」川上さんが考えながら答えました。

「それも一理ある。しかし、根本的な問題は、日本に古くから慣習化されている『御用聞き営業』だと思う。これは、お客様から課題を振ってもらうのを待つ、言わば受動的スタンスですね。でも、我々は違う。価値提供をすることを主眼とする営業スタイル。もっとアクティブに動かなければならない。アクティブに動くには事前準備が必要。これは、私が外資系で学んだことの一つです。」前職は外資系企業に勤めていた信夫課長が経験談をもとに続けました。

「御用聞き営業ですか…」川上さんが興味深そうにうなずく。

「うん。我々は業界やテクノロジーの最新トレンドを熟知している。もっと我々から顧客に対してトレンドの共有をして、問題の共有をして、こちらから問題解決のソリューションを示すべきだと思う。例えば、今のやり方でも問題ないかもしれないが、最新テクノロジーとかAIを活用すると効率が2倍になるとか、当たり前だと思っていた作業が今では無駄になりつつあるといった提案を差し上げれば、顧客にとっても知らなかったことに気付けるしメリットがある。」

「なるほど。具体的な提案をこちらから積極的にすることで、顧客に対して新たな価値を提供するわけですね。」川上さんが理解を深めました。

「そう。訪問前の準備がしっかりしていれば、訪問先でのパフォーマンスも向上する。例えば、今日の訪問では、川上さんが顧客の業界動向や最近の課題を事前に調べていたおかげで、的確な質問ができましたね。」

「はい、そして、出張の計画も重要です。今日は3件の訪問を効率よく回れました。これは信夫課長の指示があったからこそです。」川上さんが付け加えました。

「わざわざ2人分の経費を使って名古屋まで出張に行くからには、出張の成果を最大化するために、S、A、Bグループにカテゴライズされた潜在顧客への訪問を入れるのは当然のことだと思います。これも外資系では当然のように実施されていることなんだけれど、あまり日本の営業現場では実施されていないんですよ。御用聞き営業だと、目の前の顧客だけしか考えられなくなる。もっと主体的にこちらから動くことが大切だ。」信夫課長が再び頷きます。

「その計画性が成果を最大化するポイントですね。まず、訪問先の場所と移動時間を考慮して、効率よく回れるようにスケジュールを組みました。それから、各訪問の内容に応じて準備を行い、事前に必要な資料や情報を整えました。」川上さんが具体的に説明します。

「それは素晴らしい。効率と効果を両立させる計画法、まさにSaaVの基本だね。」信夫課長が感心します。

成功するB2B展示会のフォローアップと顧客中心の価値提供の心得

B2B新規獲得営業において、まだまだ展示会は有望なリード獲得機会。東京ビッグサイトへ向かうSaaV営業の川上さん

「そう言えば、今の展示会のリードフォローアップ状況について話したいんだけど、最近どうですか?」信夫課長がハイボールを一口飲みながら尋ねました。

「展示会で得たリードは、村山マーケティング部長の指示に従って、S、A、B、C、Dのグループに分類されていますよね。私はその分類に基づいて、フォローアップをしています。」川上さんが答えました。

Sグループは痛みや悩みが明確かつ予算もあり、すぐに提案できるアカウント。Aグループは痛みや悩みがなんとなくあるが予算計画はこれから、先ずは提案可能なアカウント。Bグループは興味はあるが、痛みや悩みが不明確かつ予算計画も無いアカウント。Cグループは将来的に顧客になる可能性があるアカウント。そしてDグループは顧客にはならないアカウントです。」川上さんが満足げに説明しました。

「良く覚えてますね。展示会後のフォローアップは非常に重要だ。多くの企業が高い予算を組んでリード獲得のために展示会へ出展するけれど、目の前の仕事に忙殺されてフォローアップを怠ることが多い。それではせっかくのリードも無駄になってしまう。1枚のリード獲得に当たり1万円も要することもあるのにも関わらず!本当に優れた企業は、年に1回の展示会でしか新規獲得営業をしないとも言われているんだよ。我々もそのような状況になるべきだ」信夫課長が少し興奮気味に伝えます。

「そして、展示会で獲得したリードを効果的にフォローアップするためには、潜在顧客のステータス理解が欠かせない。顧客のニーズや関心に応じて適切なアプローチを行うことで、フォローアップの効果を最大化することができる。」信夫課長が続けます。

展示会で出会った方々は、少なからずとも、何か情報を探しているか、何かテーマがあるか、何か目的があるはずです。その目的にはステータスがあります。単なる興味、最新トレンドの把握、こんなソリューションないかな、痛みや悩みが顕在化されており、解決出来るものを探している、など。これは大変な作業かもしれないけれど、それぞれに最適なタイミングで最適な価値や情報を届ける必要があるんだ。決してこちらの都合になってはならない。我々は営業だから売りたいのは分かる。でも、価値が入っていないものを直ぐに売ろう、売ろうとしてはいけない。」信夫課長が補足します。

「はい、展示会で得たリードに対して、グループに分類し、S、A、BグループについてはSaaV営業が最適なタイミングで質の良い情報やコンテンツをお届けする。C、Dグループについては、村山部長が率いるマーケティングチームから最適な情報を提供する。これからもリードのフォローアップをしっかり行い、自分よがりにならないフォローアップを努めていきたいです。」

営業とマーケティングの連携によって産まれるプレゼンテーションキットと守破離

名古屋の居酒屋で、価値創造営業について熱弁する信夫課長と川上さん

「信夫さん、以前、私がセールスプレゼンテーションキットを使わずに勝手にプレゼンテーションを改変してしまった件、覚えていますか?」川上さんが赤みを帯びて少し反省した表情で切り出しました。

「あ、あの時は驚いたよ。川上さんが独自のプレゼンテーションを作って、顧客に提示した時はー。なぜキットを使わなかったの?」信夫課長が尋ねました。

「当時は、自分なりに顧客に最適な価値提供をしようと思っていたんです。でも、結果的に顧客に混乱を招いてしまいました。それに、メッセージが一貫していないことで、信頼性が損なわれたと思います。」川上さんが率直に答えました。

「そうですね。「顧客にとって最適なタイミングで、最適な情報を提供する」っていうのは口で言うのは簡単だけど、非常に難しい。それぞれ主観もあるからね。だから、そのために村山マーケティング部長が中心となって、公式のセールスプレゼンテーションキットを用意しているんです。そうすることで、会社としての一貫したメッセージを顧客に伝えるために作られている。特に我々のようなSaaVを提供する企業にとって、ブレないメッセージは信頼の鍵です。」信夫課長が説明します。

「実際、先日仰っていたように、外資系企業ではこのようなキットが当たり前に用意されているようですね。日本企業にはそれがなかったり、有効活用されていないことが多い傾向だと・・・。」川上さんが続けます。

「そう。外資系企業は最初から海外展開を視野に入れているから、多種多様な文化や商慣習の人達と一緒に仕事をすることが前提になっていることや異文化を受け入れながらも自社の価値を正しくお伝えするために、明確なミッション・ビジョン・バリューを伝えることが必要なんだ。そのためにセールスプレゼンテーションキットが重要になる。」信夫課長が頷きます。

「そうですね。我々も海外にソリューションを提供していくためには、この文化を醸成する必要がありますね。」川上さんが同意します。

「『守破離』の概念がここで生きてくるんだ。まずは基本を守り、次にそれを破って自分なりの工夫を加え、最終的には独自の道を見つける。最初の基本を守る段階では、プレゼンテーションキットをしっかりと活用することが重要だ。」信夫課長が説明します。

「はい、まずは基本を守り、その上で顧客の具体的なニーズに合わせてカスタマイズする。そして最終的には、自分のスタイルで顧客に価値を提供する。」川上さんが納得して答えました。

「それに加えて、営業とマーケティングの連携も欠かせない。マーケティングチームからのインプットを受けて、営業活動を効果的に行うためには、両者のコミュニケーションが重要だ。」信夫課長が続けます。

「はい、定期的なミーティングを開催して、営業チームからマーケティングチームへマーケットの一次情報を積極的に共有すること。そして、マーケティングチームが提供する世界のトレンド資料やデータを営業チームが活用しやすい環境をつくることが重要ということですね。」

「これからも営業とマーケティングの連携を強化して、SaaVの価値を最大化していこう。今日のミーティングの結果やディスカッションポイントなどについてもCRMにインプットして、積極的に村山マーケティング部長へ情報を提供していこう」信夫課長が力強く語りました。

「はい。」川上さんが笑顔で応じ、「すいませーん、生もう一杯お願いします!」と上機嫌にオーダーしました。

価値創造営業(SaaV)を実現する組織運営と新しい日本営業のカタチ

居酒屋で価値創造営業について熱弁をし過ぎた為、東京行きの最終新幹線に向かって走る信夫課長と川上さん

「さーて、SaaVを実現するための組織運営について、もっとウチが良くしてなっていく為にどうした方が良いと思う?」信夫課長が真剣な表情で尋ねました。

「SaaVを実現するためには、営業から経営まで一貫した体制が必要ですよね。営業チームだけで実行するのは限界があります。そもそも顧客との長期的な関係を構築することを主眼としています。すなわち、短期的な売上と長期的にみた自社のメリットを全社的に考える必要があります。また、営業だけではなく全社で顧客へ価値を提供する姿勢が求められると思います。」川上さんが答えました。

「その通りですね。そこが我々営業の悩ましいところであり、創造性が問われるところでもある。また組織全体でSaaVを実践するためには、明確なビジョンとミッションが必要だし、これが全社員に浸透していることが大切だね。」信夫課長が強調しました。

「具体的にはどのように実現していくべきですか?」川上さんが尋ねました。

「まずは、俺を含む管理職、経営幹部からのコミットメントが必要。経営陣がSaaVの重要性を理解し、それを全社に浸透させるためのリーダーシップを発揮することだ。」信夫課長が説明します。

「確かに、経営陣のリーダーシップがなければ、全社的な取り組みは難しいです。幸いウチの経営層が単なるモノ売りではない付加価値の重要性を何度も強調されてます。」川上さんが同意します。

「そして、営業とマーケティング、技術、開発との連携も重要だ。これについては、先ほどの話のように定期的な情報共有や共同プロジェクトを通じて強化していくことが必要だ。」信夫課長が続けます。

「それに加えて、組織全体での教育やトレーニングも欠かせませんね。SaaVの理念や具体的な実践方法について、全社員が理解し、実践できるようにすることが重要です。」川上さんが補足しました。

「組織全体での継続的な学びと改善の文化を醸成することが、SaaVの実現には不可欠だ。」信夫課長が力強く語りました。

「では、具体的にどのような取り組みをすればいいですか?」川上さんが尋ねました。

「例えば、全社員の入社時におけるミッション・ビジョン・バリューの共有そしてディスカッション。そして明確な社員評価基準。定期的な全社員向けの研修やワークショップを開催し、SaaVの理念や実践方法を共有する。また、成功事例を社内で共有し、学びを広めることも重要だ。」

ふと時計を見た信夫課長が、驚いた表情を見せました。「おっと、もうこんな時間か。終電の新幹線が迫っているぞ!」

「本当だ!走りましょう!」川上さんも慌てて立ち上がりました。

二人は慌てて居酒屋で会計を済まし、名古屋駅へ向かって全速力で走り出しました。駅のホームに着くと、ギリギリで新幹線に飛び乗ることができました。

「ふう、間に合ったな。」信夫課長が息を切らし苦笑しながら言いました。

「本当に!危なかったっす!」川上さんも息を切らしながら応じました。

「若くて良いな。息が切れてないじゃん。ってか、いいかげんにそのボタンダウンのワイシャツとレジメンタル柄のネクタイ止めろよ。」信夫課長が笑顔で言いました。

「あ、またやっちゃいましたね、自分・・・。」川上さんは恥ずかしそうに笑顔で答えました。

「さあ、帰るぞー!」

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この記事を書いた人

K.Komatsuのアバター K.Komatsu Creative Director

WAKOH & CO. 代表取締役
各企業や個人が持つ独自の強みと核心(DNA)を活かし、絶えず変化する世界の中で価値を創造します。和を以て、理想の実現へと導く伴走者として、企業の成長をサポートします。

オートメーション産業、IT産業、アパレル産業におけるセールス、マーケティング、コンテンツ・クリエイションの豊富な経験と実績を持ち、多角的な視点からビジネスの成功を支援します。

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