展示会リストの再評価:川上さんと信夫営業課長のディスカッション
前回までのあらすじはこちら
信夫営業課長が川上さんへ質問しました。
「そこで、現在の川上さん担当のコンタクトリストを見直してみましょう。展示会で得たリストをS、A、B、C、Dグループに分類しているね。次にどのアカウントにコンタクトすべきか、どのように考えているか話しませんか?」
川上さんはメモアプリを立ち上げながら答えました。「はい、Sグループは痛みや悩みが明確で予算も確保されているアカウント、Aグループは課題を抱えつつも予算計画がこれからのアカウントです。Bグループは興味があるが具体的な課題が不明確で、Cグループは将来的に顧客になり得る可能性があるアカウント。そしてDグループは、正直、顧客になりそうにないアカウントです。」
「その通りですね。それで、現在のアプローチ状況はどんな感じですか?」と信夫課長が続けました。
「SグループとAグループには既に連絡を入れ、初回のヒアリングも進めています。しかし、ご存知のようにA社に時間を投下しすぎました。BグループとCグループはまだこれからです」と川上さんは説明しました。
「良い進み具合ですね。では、SグループとAグループのアカウントには、どのようにアプローチしていますか?」と信夫課長はさらに問いかけました。
「基本的にはコールをして、初回のミーティングを設定しようとしています。でも、なかなか反応が薄くて…」と川上さんは少し困った表情を浮かべました。
信夫課長は微笑みながら「川上さん、コールドコールも良いけど、ご存知のように今の時代は情報アクセス利便性に優れ、かつ、将来のビジネスパートナーも展示会でたくさんの情報を浴びている。どうやって彼らに興味を持ってもらうか、考えてみたことはありますか?」と尋ねました。
「そうですね…例えば、展示会で得たコンタクトレポートをもとに、具体的なソリューションや業界の最新トレンドを紹介するようなメールを送ってみるとか…」と川上さんは少しずつアイデアを出し始めました。
「そうですね。SaaV(Sales as a Value provider)、価値創造営業の基本は、顧客の痛みを理解し、最適なタイミングで価値を提供することですね。例えば、展示会で得た情報を基に、それぞれのアカウントが直面している課題を具体的に解決する方法を提案することが大事ですね」と信夫課長はアドバイスを続けました。
「ええ、まずはSグループのリードに対して、展示会で話した内容を基にして、彼らにとって有益な情報を提供するメールを作成してみます。そして、次にAグループのリードにも同じようにアプローチを試みます」と川上さんは決意を新たにしました。
「うちのコンタクトレポートはマーケティング部と協力して再現性の高いレポートになっているはずです。展示会で得た情報を活用して、将来のビジネスパートナーに対して本当に価値のある提案をしていこう。これが、価値創造営業(Sales as a Value provider)の本質です!」と信夫課長は微笑んで応えました。
展示会で出会った将来のビジネスパートナーに興味を持ってもらう方法
展示会後のフォローアップは、単なるコールドコールではなく、よりクリエイティブで効果的なアプローチが求められます。ここでは、特にSグループ、Aグループの将来のビジネスパートナーに興味を持ってもらうための具体的な方法を紹介します。
- 将来のビジネスパートナーの課題に応じたメールテンプレートの作成
展示会で得た情報をもとに、将来のビジネスパートナーが抱える(または抱えているであろう)問題、課題、将来のビジョンなどをカテゴリー別に整理します。それぞれのカテゴリーに対応したメールテンプレートを作成し、個々のニーズに合わせたメッセージを送信します。例えば、以下のようなカテゴリーが考えられます。
• 生産課題: 変種変量生産、多品種少量生産への柔軟な対応
• コスト削減: 効率化によるコスト削減の事例
• 市場拡大: 海外市場や異業種市場への展開支援
• 技術的課題: 新技術の導入に関するサポート
• 属人的課題: 再現性の高い組織、属人化(勘コツ急所)を解消する関するサポート
これらのテンプレートには、具体的な解決事例や経営に役立つ情報を含めることで、受信者にとって有益な内容にします。また、展示会後にトピックを絞った無料/有料セミナーを開催出来れば、お申し込みページをお送りします。
- インサイトを活用した個別メッセージの作成
メールテンプレートに加えて、展示会で得た具体的なインサイトを活用して、よりパーソナライズされたメッセージを作成します。例えば、展示会での会話内容や特定の興味関心に基づいて、個別の提案や具体的な解決策を提示します。これにより、受信者は自分のニーズに合った情報を受け取ることができ、返信率が向上します。
- フォローアップの確約
メールの最後には、「追ってお電話を差し上げます」というコメントを入れておくことで、受信者がメールを認識して頂く可能性が高まります。電話をすることで、より直接的なコミュニケーションが可能となり、顧客の関心を引きやすくなります。このアプローチにより、受信者はメールに返信するか、電話を受け取る準備をすることが期待されます。
- 問い合わせの誘発
メールの中で、具体的なアクションを促すCTA(Call to Action)を設けます。例えば、「詳細なご説明をご希望の方は、こちらからご連絡ください」や、「弊社のウェビナーにご参加いただけます」など、受信者が興味を持ち、次のステップに進むよう誘導します。これにより、受信者が主体的にアクションを起こしやすくなります。
- フォローアップのスケジュール管理
一度メールを送信した後は、フォローアップのスケジュールを管理し、適切なタイミングで再度アプローチします。フォローアップのタイミングを見計らいながら、リマインドメールや追加の情報提供を行い、関心を持続させます。これにより、将来のビジネスパートナーとの関係を深めることができます。
これらの方法を活用することで、展示会で得た将来のビジネスパートナーに対して効果的なアプローチを行い、より強固な関係を築くことができます。
対面またはWeb会議での価値創造営業の実践
展示会で得た将来のビジネスパートナーとのフォローアップが成功し、いよいよ対面またはWeb会議での面会が設定された場合、次に重要なのは価値創造営業の実践です。ここでは、具体的なステップを紹介します。
1.価値創造のための情報提供
会議の中で、顧客に対して価値を提供するための情報を準備します。ここでのポイントは、どのような情報をお届けすることが相手にとって価値がある。または有益かと感じられる情報か?を展示会コンタクトレポートをもとにクリエイティブに考えることです。
• 業界トレンドの紹介: 顧客の業界に関連する最新のトレンドや自社の業界に関連する新たな動きを紹介します。これにより、顧客が直面している課題を新たな視点で理解する手助けをします。または顧客が気付いてもいない問題を気付くことの手助けをします。
• 異業種の成功事例: 顧客の業界とは異なる業種での成功事例や新しいトレンド、新技術を紹介します。異業種の事例から学ぶことで、新しい解決策やアプローチ、異なる視点からの気付き、アイデアを触発するのヒントを提供します。
• 海外のベストプラクティス: 海外での成功事例やベストプラクティスを紹介します。日本国内だけでなく、グローバルな視点での情報を提供することで、顧客に新しいインサイトを与えます。
2. 顧客の痛みと悩みの顕在化
顧客が抱える痛みや悩みが顕在化されているか確認します。この段階では以下の点を重視します。
• 課題の明確化: 顧客が現在直面している具体的な問題や課題を確認します。これにより、提供すべきソリューションの方向性が見えてきます。ただ、人間は関係性が出来ていない人間に対して胸襟を開きません。何でもかんでもストレートな質問はご法度です。先ずはこちらから先方へGive出来ることを考えましょう。
• 予算化の有無: 課題解決のための予算が既に確保されているか、今後確保される予定があるかを確認します。予算が確保されていない場合は、どのタイミングで予算化されるのか、予算化の見込みについてもヒアリングします。
• 意思決定者の特定: 会議に参加する人物が意思決定者であるかどうかを確認します。意思決定者でない場合、その人物がどなたか、組織の決定プロセスを理解することが重要です。こちらもストレートな質問はご法度。
3. 双方向のコミュニケーション
価値創造営業の基本は、単なる情報提供ではなく、双方向のコミュニケーションです。顧客との対話を通じて、具体的なニーズや要望を深く理解し、共に課題解決に向けた道筋を描き、自社に持ち帰れる技術的課題や確認事項を得ます。
• 質問の重要性: 顧客に対して適切な質問を投げかけ、彼らの課題やニーズをヒアリングします。しかしながら、病院の先生のように直接的に「どこが痛いの?」すなわち「現在直面している最大の課題は何ですか?」、「その課題を解決するためにどのような取り組みをされていますか?」といった質問は有効的ではありません。クリエイティブに考えることが重要です。
• フィードバックの活用: 顧客から得たフィードバックを基に、さらに具体的な提案や解決策を考えます。顧客の意見をから自社に持ち帰って、技術部、開発部とディスカッション出来る、自社をも触発するような地味だけれども解消されることで革新的なアプローチになるコンテンツはないか?傾聴します。顧客のコメントから反映した提案は、より現実的で実践的なものとなります。
4. 継続的な関係構築
一度の会議で終わらせるのではなく、継続的な関係構築を目指します。定期的に情報を提供し、フォローアップを行うことで、長期的な信頼関係を築きます。
• 定期的な連絡: 会議中に得た質問の中で回答出来なかったコンテンツは次回コンタクトへ向けた良いきっかけです。完璧を目指さず、その後も定期的に連絡を取れる、または最新情報や業界トレンドを共有できる顧客との関係を維持し、次の機会につなげます。
• フォローアップミーティングの設定: 会議後のフォローアップミーティングやネクストステップを設定し、進捗状況を確認しつつ、さらに具体的な提案を行います。
このようにして、顧客に対して最適なタイミングで価値を提供し、信頼関係を築くことで、価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)の成果を最大化することができます。
展示会後の評価と継続的なフォローアップ
展示会後の実際のミーティングを通じて、SグループからAグループに再評価するアカウントや、逆にAグループからSグループに昇格するアカウントも出てきます。また、AグループからBグループに再評価するケースもあります。展示会は生き物であり、常に動いているため、これらの不確定要素をひとつの仕事の一環として楽しみながら、柔軟に取り組む姿勢が重要です。
展示会後の継続的なフォローアップでは、マーケティング部との連携が欠かせません。価値創造営業(SaaV: Sales as a Value provider)の営業担当者がすべてのフォローアップを担当するのは現実的ではありません。マーケティング部が中心となり、展示会で得たリードを適切に管理し、必要な情報を提供することで、営業チームが効果的に動けるようサポートする体制が求められます。
価値創造営業の営業担当者は、特にSグループとAグループにフォーカスしてアプローチを行うべきです。これにより、限られたリソースを最大限に活用し、効率的に成果を上げることができます。一方で、BグループやCグループに対しては、マーケティング部が定期的な情報提供や関係構築を担当し、将来的な商談の機会を育てていきます。
このように、展示会後のフォローアップ活動は、営業部とマーケティング部の連携が鍵となります。各部門が役割を分担し、協力し合うことで、顧客に対して一貫した価値提供が可能になります。
WAKOH&CO.では、顧客理解と最適なタイミングでの価値提供をサポートするサービスを提供しています。展示会後のフォローアップやマーケティング部と営業部の連携を強化するための具体的なアプローチについても、ぜひご相談ください。私たちの経験と知識を活かし、貴社のビジネス成長をサポートさせていただきます。
コメント